BS マンガ夜話「のだめカンタービレ」

きのうリアルタイムで観たよ。やあ、面白かったー。論調がずっと、

  • 絵そのものはうまくないけど、マンガとしては充分な絵
  • あんな汚い部屋に住んでいるヒロインは既存の少女マンガではありえなかった
  • 読んでいると音楽が聴こえる

ってあたりをループしてた。あとは、視聴者 FAX やメールは大半キャラ語り。進行アシスタントの人も「千秋様」つってた。はは。
とても好意的に語られていたし、褒められている内容に特に異存はなかったんだけど、わたしがこのマンガで一番好きなのは、「天才同士は一緒にいられるのか」みたいなところをすごーく丁寧に描いている点なので、そゆ話が全然出なかったのがちょっと物足りなかったかなあ、と。
番組終了近くになってから、「欧州編に入ってトーンダウンしたとする人も多いけど、そのへんどう?」って岡田さんが話を振っていて、「そういう人の気持ちは分かるけど、後半だって充分面白い」っていしかわさんとか夏目さんが応じていて、人それぞれじゃね? みたいな感じで終わってたのが緩くて笑った。でも、その日本編と欧州編の差って、キャラ本位の面白さを楽しむためのものと、のだめと千秋の人間的成長やら葛藤やらの掘り下げを味わうためのもの、っていう落差な気が。だから、欧州編の意義というか、そゆのにあまり触れてなかった*1のがちょっと残念に思えたんでした。
わたしは欧州編、すごく好きなんですよね。2人がちゃんと自分の音楽を獲得するために戦っているし、切実だし、その中でお互いの存在が必要なものであり、足かせにもなる、っていうアンビバレンツがいいなあ、って思ってて。そういうのをじっくり描いてるところがすごく好きなので、そのあたりのよさが語られてなかったことに少々じたじたしていたよ。
「オーケストラの音楽を描くのがうまい」って出演者一同、何度も言ってたんだけど、確かにそこがこのマンガの特徴の1つなんだろうけど、でも、主人公はピアニストですからね? どれだけお互いの音楽を尊敬しても、恋人の音楽にレギュラーでは参加できない訳だから。
「のだめは千秋にとってミューズで、千秋ものだめにとってそう」と夏目さんは言ってたけど、確かにそうではあるんだけど、欧州編に入ってからはそう単純じゃないというか、お互いの成長が、お互いの道をどんどん引き離してしまう可能性も孕んでる、っていう関係性が出て来てると思うし。そのへんを、少女マンガの枠組みの中で真面目に描いてるところがわたしはすごく好きだし、このマンガの価値のあるところだとも思っているので、そこに意義を見出している人があの場にいなかったのがね、ちょっと寂しかったス。しょうがないんだけど。
ちょっと関係ないけど、ここに意義を見出すのって多分、わたしが富士見二丁目交響楽団シリーズを読んでいるからですね。前もちょっと書いた気がするけど、子供の頃にかじった JUNE 系列のマンガや小説の中で、唯一今まで読み続けているのがこれで。のだめに対する読み方も、ある部分でこの小説の影響を受けているのだなあ自分、ってことに今気付いた。
実際、この2作は構造がよく似てて、どちらも前半では、小さなコミュニティの中で色んなキャラが入れ替わり立ち代り出てきて、その中でいろんな出来事があって、それを経て主人公2人の関係が強化されてる。後半では、音楽家としての自分の成長を目指して海外へ出て、物理的に近くにいることができなくなったり、成長の段階がずれて関係が変化したりしてる。どっちの作品も、主人公2人の性格の対比や関係性が魅力的で、音楽に関する表現が豊かで、オケの群像の書き込みもうまく、脇役にも愛と人生と美学が感じられる。エトセトラエトセトラ。
フジミシリーズはなんか、2人の関係が安定してからはエロシーンもメリハリがなくなっているし(不安定なころのエロはエロかった…!!)、BL とかそういう枠をおっきくはみ出してる感じがあって、だから余計、のだめとの共通化を(脳内で)しがちなんだと自分で思う。このへんが自分でもちょっと面白かったんだけど、今後の展開で落差が出るのかなあという気もするし、どっちも楽しみだよ、ってだけの話で、ホントに余談なんですがネ。
…お、余談書いてて思い出したよ。この番組でのだめを取り上げると恋人に聞かされたわたしは、「絶対、『のだめと千秋は寝てるのか否か』みたいな話が出る!」と断言していたんだけど、番組冒頭のほうで出て来て、ほれみろ! ってガッツポーズだった。でも面白いもんで、出演者全員「ない」っていうのを前提に、「セックスしてないっていうのがまた…」的に語ってたのに笑ってしまったよ。おっちゃんたちはのだめが処女だと信じてたいんや…みたいな? 世間的には「え、描いてないだけでしてるでしょ?」って見てる人も結構な割合でいるようなので、おっちゃんたちのかわゆさににやにやっとなりました。
かわゆさといえば、夢枕獏さんが「文章としてすごくいい」とうっとりと朗読したところが大半、あの過剰な評論家(名前失念、ドラマでミッチがやってた役)の台詞だったところに大笑い。菊池くんの R☆S オケ最後の演奏のときの台詞「女の子たちに手を出さなくてよかった、またこのオケに帰って来られる」ってのを取り上げて、「このキャラクターをもう一度登場させるべきだ」なんて熱弁振るっちゃう夢枕さんたら、うんざりするほどロマンチストなのだなあ、ってにやけた。夏目さんもミルヒのことを「これは僕!」って言ったりしてなー、髪型までミルヒっぽく跳ねさせてたし。もーなー、おっちゃんたちしょうがねーなー(にこにこ。
ともあれ、「このマンガの魅力」っていうと、キャラの魅力の話になることが多くって、上にも書いたけど、視聴者 FAX やメールは圧倒的にそうで、出演者はさすがにマンガ読みの人たちだから他の視点もちゃんとあるけど、でもやっぱりキャラに触れる局面が多かった、このマンガについては。それだけ、主人公2人のキャラクターの魅力が圧倒的な作品、ってことなんでしょうね。それを再認識する放送でありました。うん、面白かったス。

おまけ:夏目さんのブログのミルヒごっこの悪乗りがひどいや!
http://blogs.itmedia.co.jp/natsume/2007/11/post_25b6.html

*1:具体的には、夏目さんが「多分こっちがホントに描きたかったこと」、いしかわさんが「日本編が売れたから次のステージが見えて欧州編描きたくなったんじゃ」って言ってた程度。

クワイエットルームにようこそ

きのう観た。
…え、また? ていうのは禁句。りょう+宮藤官九郎トークショウつきだったんでした。さすがに、疲れてたこともあって冒頭2分くらいちょっと寝てしまったりしたよ。すまんすまん。
トークは…えと、緩かったです。司会の人がアスミックエースの広報の女性で、正直、わたしのほうが喋れるんじゃ、っていうくらいの半端な感じで、客に向けて喋るんじゃなくて、りょうちゃんと宮藤さんに向けて喋っていたので、会話の規模がちっちゃくなっちゃって、実に実にこじんまりと、地味ーな感じのトークショウだった。
つか、宮藤さんは疲れてたのか、言葉を発するときに異様な時間がかかっていて、その間の静けさが地味さを増幅してた。大勢の人がいるのにしーんとしていて、だからって緊張感がある訳でもなく。時間も遅かった(1950〜 の予告ありの上映後にトーク、多分始まった時点で 2200 すぎてた)し、間延びしたトークだったけど、壇上で宮藤さんが急にくしゃみをしたり、質疑応答で質問者が質問し終わった直後に「…ごめんなさい、なんとなくは聴いてたんですけど…」と再度質問を言わせたり、「お尻を出すシーンの前日によく尻を洗った」「あんまりきれいすぎてもどうかと思ってほどほどにした」「大人計画で一番ちんこ触るのは僕らしいです」等々、訊かれてもいないのにリアクションに困るようなことを自ら言い出したり、「松尾監督の演出に『俺だったらこうするのに』と思ったことは」と質問されて、「ないですね! 松尾さんに限ってはまったく」「むしろ助監督に、俺だったらこうする、って思った」と松尾絶対主義、松尾さんに対しては未だ演出助手気質を保持してるさまを露呈していたりしたのが、何つっかもう、実にすてきで、なんなのかしらこの人37にもなって、とときめきを禁じえず、ずうっとにやにやしておりました。えへ。
あ、あと、りょうちゃんが言っていた、ボールペンのシーンで松尾さんが「パラパラ踊って」と演出をつけたのがとても分かりやすかった、っていうのに笑った。分かりやすい…? 宮藤さんは宮藤さんで、「大事なシーンになると松尾さんの顔がきりっとしてた」とか言ってて、あのこれはなんですかネー、おのろけー? とかそういう気持ちの悪いことを…や、実際間違いなくのろけなんですけどもー、でも松尾さんいないところで松尾さんの話を嬉しそうにする宮藤さん、ていうのはやっぱりいつ見てもいい光景で、ええ、まあ、堪能しましたって話なんですけど。
しかし、改めて観て思ったけどこの映画面白いねえ。笑えるところがちゃんと笑えるというか。そゆのいらん、とする人もいるんだろうけど、映画館ではいつも、皆楽しそうに笑ってるよ。笑うの嫌いな人はああいうのヤなのかな。きのうは男の人がげらげら笑っててほほえましかったです。
…とか今更なことを書いてるのは、宮藤さんが「面白かったって言え」と言ってたからです。宣伝してください、と言っておった。基本、言われるがままの女*1なので改めて宣伝。未見の方は是非大竹しのぶのおっかない芝居を大スクリーンで。渋谷シネマライズでの上映は12月までだそうです。押忍。
じゃあ最後に、映画を観て気付いたことをメモる。一応畳んでおこう、か、な。

*1:という台詞が映画中にあります。

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