クワイエットルームにようこそ

きのう観た。
…え、また? ていうのは禁句。りょう+宮藤官九郎トークショウつきだったんでした。さすがに、疲れてたこともあって冒頭2分くらいちょっと寝てしまったりしたよ。すまんすまん。
トークは…えと、緩かったです。司会の人がアスミックエースの広報の女性で、正直、わたしのほうが喋れるんじゃ、っていうくらいの半端な感じで、客に向けて喋るんじゃなくて、りょうちゃんと宮藤さんに向けて喋っていたので、会話の規模がちっちゃくなっちゃって、実に実にこじんまりと、地味ーな感じのトークショウだった。
つか、宮藤さんは疲れてたのか、言葉を発するときに異様な時間がかかっていて、その間の静けさが地味さを増幅してた。大勢の人がいるのにしーんとしていて、だからって緊張感がある訳でもなく。時間も遅かった(1950〜 の予告ありの上映後にトーク、多分始まった時点で 2200 すぎてた)し、間延びしたトークだったけど、壇上で宮藤さんが急にくしゃみをしたり、質疑応答で質問者が質問し終わった直後に「…ごめんなさい、なんとなくは聴いてたんですけど…」と再度質問を言わせたり、「お尻を出すシーンの前日によく尻を洗った」「あんまりきれいすぎてもどうかと思ってほどほどにした」「大人計画で一番ちんこ触るのは僕らしいです」等々、訊かれてもいないのにリアクションに困るようなことを自ら言い出したり、「松尾監督の演出に『俺だったらこうするのに』と思ったことは」と質問されて、「ないですね! 松尾さんに限ってはまったく」「むしろ助監督に、俺だったらこうする、って思った」と松尾絶対主義、松尾さんに対しては未だ演出助手気質を保持してるさまを露呈していたりしたのが、何つっかもう、実にすてきで、なんなのかしらこの人37にもなって、とときめきを禁じえず、ずうっとにやにやしておりました。えへ。
あ、あと、りょうちゃんが言っていた、ボールペンのシーンで松尾さんが「パラパラ踊って」と演出をつけたのがとても分かりやすかった、っていうのに笑った。分かりやすい…? 宮藤さんは宮藤さんで、「大事なシーンになると松尾さんの顔がきりっとしてた」とか言ってて、あのこれはなんですかネー、おのろけー? とかそういう気持ちの悪いことを…や、実際間違いなくのろけなんですけどもー、でも松尾さんいないところで松尾さんの話を嬉しそうにする宮藤さん、ていうのはやっぱりいつ見てもいい光景で、ええ、まあ、堪能しましたって話なんですけど。
しかし、改めて観て思ったけどこの映画面白いねえ。笑えるところがちゃんと笑えるというか。そゆのいらん、とする人もいるんだろうけど、映画館ではいつも、皆楽しそうに笑ってるよ。笑うの嫌いな人はああいうのヤなのかな。きのうは男の人がげらげら笑っててほほえましかったです。
…とか今更なことを書いてるのは、宮藤さんが「面白かったって言え」と言ってたからです。宣伝してください、と言っておった。基本、言われるがままの女*1なので改めて宣伝。未見の方は是非大竹しのぶのおっかない芝居を大スクリーンで。渋谷シネマライズでの上映は12月までだそうです。押忍。
じゃあ最後に、映画を観て気付いたことをメモる。一応畳んでおこう、か、な。

  • マトリョーシカの「CAUTION!」は映画「オールド・ボーイ」っぽいかも。
  • 嫌な感じのことがあったり、言われたりすると、顔面がくしゃっとなる鉄っちゃん、チックの気がある設定だったんですね。そゆシーンの挙動不審な動きがなんかしんどくて、今イチちゃんと見られてなかったかも。
  • 明日香に「この酔っ払い!」って言うところの鉄っちゃんの身勝手さが改めて沁みた。ああいう女から、あの局面で半端に逃げるくらいだったら、最初から関わらないほうがずっとやさしいと思うよ。
  • パズルが完成したときの、カーテン越し、喜ぶミキと明日香とサエちゃんの影が映るシーン。あそこのささやかさにちょっと涙が出そうになった。過酷な入院生活のささやかな喜び、という感じ。そのことで、健康な部分の気持ちを失わないように、自分の健全な感受性を大事に、大事にしている感じ。
  • で、その後の完食ワゴンを転がすナース山岸の涙に、母さんちょっと泣いてしまった。台詞まで全部知ってるのに。何でだろう。疲れてたから?
  • 本編の内容に関わるので畳んだ中に書くけど、トークで宮藤さんは、鉄っちゃんが明日香に乞われて「うっとおしいよ」って言ったのは、本当にうっとおしかったのか、言わなきゃ終わらないと思ったから言ったのか、って点、本当はどっちなんだろう…って思いながら演じてたそうな。その、分かってないで言ってる感じが鉄っちゃんぽくて、すごくいいトーンだったと思うので、やっぱり当たり役だったなーって思った。
  • 前から思ってたけど、ラストの着物の人の件。あれを、「明日香は前向きに笑って映画が終わった」と内田有紀ちゃんが語っているのをどっかで読んだか聞いたかしたのだけど、わたしには明日香が現実の光景と頭ん中の光景との区別がつかなくなってるのかな、と最初に観たときから思っていた。どうなんだろうか。物理的に、彼女が脱走してから明日香が退院するまで数日間が空いてるし、リアルに本人ではありえないと思うのですが。
  • 蒼井優ちゃんは何度観ても完璧だ。一瞬たりともミキじゃないシーンがない。パズル中にチリチリが入ってきて明日香がそれに構うシーンの、「そうだよ、明日香はねえ」って、すごいんだから、か何か言おうとして押し留めたときの表情がすごく胸が痛んだ。チリチリと同じレベルになりたくない、みたいな感じかなあと思って。
  • 明日香がミキを殴ってしまうシーン、あそこのスローモーションで、殴られたあとにミキが顔をあげたときのその目が、ものすごく悲しそうな目をしていて、つらいんだけど、絶頂にゾクゾクした。
  • わたしはやっぱり明日香は好きじゃないや。あんな風に自分のことでいっぱいいっぱいな人はいやだ。関わっている人たちの揺らぎを見ない振りばっかりして、そのくせ自分の揺らぎは精一杯、蕁麻疹まで出して主張しちゃって。みんながそんなことしたら誰も背負う人がいなくなるっつの。自分だけは背負わずに、背負わせたい、みたいなとこ、本当にずるい人だなあと思う。多分この作品に気持ちが刺激されるのは、自分の中にも確実にある、明日香的な部分に対する「いやだなあ」という気持ちのせいなんだなあと思った。改めて。

*1:という台詞が映画中にあります。