のだめカンタービレ17巻/二ノ宮知子

のだめカンタービレ 17 (講談社コミックスキス)

のだめカンタービレ 17 (講談社コミックスキス)

ううう…ちょっと痛くなって来た…千秋父がこういう形で物語に絡んでくるとは思っていなかったので、ちょっと千秋の立ち位置が揺らぐ感じがあって、読んでてひやっとなる。のだめが地道に、弱いところをちょっとずつちょっとずつ補強して成長しているのに、千秋が揺らぐとしんどいことになるよなあ、って。
2つの才能が寄り添うために、お互いを損なわずにいられるのか、みたいな、そういう芸術家同士の恋物語っていうのがいちジャンルとして存在すると思うんだけど、その中でものだめは、あまり互いの才能への嫉妬を取り沙汰しない傾向があって、そこがよいなあと思っていたようです、わたしは。勿論、葛藤は物語上重要な要素だし、大いに結構なんだけど、フィクションの世界くらいは、愛情があるのに一箇所噛み合わないがために逃げられないループで追い詰められる人間関係、とか、そういうホントにしんどいところは描かないでいてくれてもよいではないかな…みたいな、そういう甘えた気持ちなのかもしれない。読者の身勝手だけど。
お互いの音楽のために離れている時間は多分、のだめにとって、ずっと2人で一緒にいるための時間でもあって、だからすごく幸せなすれ違いなんだと思うんだけど、のだめの向かおうとしている場所に、違うルートで向かっているはずの千秋が、どこか余所のほうを向いているのでは、って不安はなんか、のだめが可哀想で読んでいて結構いやだ。あんなに苦手だった初見だって、ちょっとずつ向上しているのになあ。千秋、しっかりすれー。
しかし、千秋父の「同じ世界に来るっていうのはこういうことか」っていう一言は重い。もしやこの先は、芸術家同士の恋物語っていう側面だけじゃなく、子が親を乗り越える的な側面も出てくるのかしらん。その過程で、ちゃんと千秋サイドに、のだめの居場所があるとよいなあと思う。そうでないと読むのがちょいしんどい。あんま、内的感情の推移とか細かく描くタイプの漫画でもないしね。さっさとのだめの必然性を千秋が確認する展開になってほしいのう。
あと、黒木くんに地味にぽわわんとなってるターニャとか、バソンへのこだわりで周囲を圧倒したポールとか、ランチに誘われようときらきらするユンロンとか、相変わらず周辺人物が愛しい。有名指揮者でいい演奏をしたオケが「人が変わったからか」って口惜しそうな千秋とか、ベートーヴェンの失敗の後の初めての練習で、千秋を迎え入れるオケのあったかさとか、読んでて、ああ、いいなあ、とほうっとなる。やっぱりいい漫画ですねえ。もっかい読み直そうっと。