WORLD HAPPINESS

改めて、総括的な感想。
面白かったり懐かしかったりいらいらしたり、という感じだった。子供連れで来られるようにキッズエリア(というか、一般客用のシートエリアの中に囲みがしてあって、遊具の置いてある空間)が設置されていたせいか、子供がすごく多かったんだけど、フェスが日本に浸透してからごりごりライブに行ってる年齢層ではないお客が多くて、更に子供も連れてるからいろいろひどかったりして、マナー面では予想していた程度には「あらら…」っていう感触はあった。でもまあ、直接被害を被ったのはパンツ出してた酔っ払い関係者だけだったからいいんだけどね…金払ってる客に関係者が不快な思いをさせてどーすんの? と思ったよ、ホントに。
比較的若め? なカップルが近くにいて、男子(オダギリジョーの偽者みたいな髪型でヒゲに黒いサングラス)は FUJIROCK の T シャツを着て、ウエストポーチに「富士山を世界遺産にする国民会議」のピンバッチとかつけてたんできっと敬虔なフジロッカーなのだと思うんだけど、原田知世が出てきたときだけステージ(ものすごく遠い)(っていうかスクリーン?)をデジカメで撮ってた。自然の中のフェスを愛しても知世画像は全然ほしい、みたいな。ちょっと笑ってしまったんだけど、やっぱり撮影する人は好きじゃないんでした。
ごはんも、食べた範囲ではいろいろおいしかったし、おやつ含めて品揃えのセンスはかなり好みだった。会場も都心からのアクセス的にもなかなかよい感じだったように思うので、マナーがどうの、ってところだけでイベント全体がダメだった、みたいなことは言いたくない。例えば RIJF とかロッキンオン主催のフェスは統制されていて、観客マナーで嫌な思いをすることは少ないかもしれないけど、主催側の価値観の押し付けがひどいなと感じることもある訳で。オルグが独善的だから、価値観が固まってない若い子向けなんだよなーと、ちょっとオエーとなることもある。大人はもっと偏屈なので、雑多な価値観を受容する場でないと、Over 40 以上が楽しめる場にならないというのは事実だろう。今回は、そういうところで細かいところが大人向けに設定されていたように感じた。
でもそうすると、マナーが悪い人がいても気にしないようにするしかなくて、わたしのように着火しやすい人間はちょっとしたがまん比べの様相を呈してしまうのもまた事実。子供を寝かせたベビーカーをシートエリアのほうに置いて、自分はキッズエリアに入り込んでビール飲んで踊りまくってた女性もいたけど、そうやって主催側がゆるく設定してあることを、自分だけよければいい、っていう風に逆手に取る人が多いと、こういうやり方は最悪の結果を招くんだろうな…と思った。参加者のモラルが求められるけど、大人だからあんまりガミガミ言わないしね。結果、言われたことを聞こえないふりをする人が出てくる。そういう感じだったかな。「最悪の結果」まではいかなかったからよかったんだけども。
まあ、1回目ということも多分にあるのかもしれない。次があるのかは知らないけど、メンツによってはまた行ってもいいかな、という程度のイラつきで済んだので、結果オーライな気がする。あのうんこな関係者がいなければ、客側にはそんな、気分が悪くなるほどひどい人はいなかった。客側の慣れも多分あるので、できたら続けてもらいたいもんです。
で、音楽の話。やっとか! …ええと、口ロロがすっごくよかった。音源聴いた範囲でそんなにぴんと来なかったんだけど、ライブはえらいよかったです。メロディアスで踊れて、かわいげもあってかっこういい。もうちょっとまとまった時間、ライブ観たいなあ。どっかの対バンイベントとか探して行ってみようかなあ。
Captain HATE and The Seasick Sailors+曽我部恵一(長い!)は曽我部さんが歌う「浜辺」が長くて爆笑。25分しか持ち時間がないって言ってるのに! 夫が FUJIROCK でちょっと立ち寄ったときも「夕方には…」と曽我部さんが言い出して笑ったという話だったんだけど、同じシーンが再現されて夢の島でも大爆笑だった。メロウだったしなあ、ホント、笑うしかない。慶一さんの歌声を久々に聴いた(多分'06年のエゾでライダーズ観た以来)(それだって5年ぶりくらいだったと思う)(もっとかも)けど、相変わらずアタックの強い歌いまわしで、ヘンに後を引くというか、ヘンに哀愁とユーモアがある声で、音程が揺れても押し切れるタフさもあって、なんだかすごくなつかしく、いとしかった。曽我部バンドと鈴木慶一部隊が融合しているのかどうか、ちょっと微妙な感じに聴こえていて、「自動販売機の中のオフィーリア」は途中でちょっと見失いそうになったものの、後半で突如、はっとさせられるようなビートと旋律が立ち上がってきた瞬間があって、ジャムっぽい部分でいい後味を残した。かなり「現場」でガシガシ戦ってる音楽だなー、ライブは体力ないと楽しめない気がする。今回はギリギリ楽しめたので嬉しかったです。音源もっと聴き込もうっと。
GANGA ZUMBA はいつ観てもずるいったらない。あんな音をフェスで鳴らせば、そりゃあ持ってゆかれるに決まっている。音楽、というか、もう祭囃子ですよあれは。その点ではソウル・フラワー・ユニオンと同じ強引さがある気がした。明らかに空気が揺れて、いろんな人の踊りたい欲を一瞬で満たしているさまがすごいったら。どっちかというと、踊って無邪気に楽しむタイプのアクトが少ないイベントだったので、一部の人の「待ってました!」感は尋常ではなかったな。真夏の砂場に水をかけたみたいに、浮き足立ったムードがどんどん会場に浸透してゆくさまは圧巻だった。このへん、スクリーンが見えない場所にいたのですが、最後のほうになって移動したら、ミヤ氏が普通にハンドマイクでむるむる客を煽りながらアクティブに歌っていたので、なんだか、おお、と唸ってしまった。なぜだ。
シナロケは、現場では揶揄するようなことを書き送ってましたが、やっぱりあれだけ、あのスタイルを貫いているのはものすごいことだよ、と思わされた。普通にラウドで、割合に音響寄りな傾向の音が続いた中では GANGA ZUMBA と並んでかなりアクセントになっていたように思う。格好よかったし、何より心底楽しそうだったよ、夫妻とも。鮎川さんが最後に謝辞を述べまくっていたのも、なんかそういうテンションの人がほかにいなかったので新鮮だった。
あと、HASYMO も現場ではあんまりいいこと書いてませんが、ものすごいテクニックの演奏が、ものすごい淡々と繰り広げられていて、それはそれでものすごいものではあったのです。ただ、周囲の Over 40 たちがどんどんぼんやりしてゆくさまに呑まれたというか…自分も体力なくなってきていて、周囲の雰囲気から退出したい感じになっていたので。でも下手に、昔の曲を昔のアレンジで、というよりもずっとチャレンジングで格好いい演奏だったとは思う。ひそやかに、ひとりのハゲ(帽子つき)と2人の白髪頭がすごい密度で音を紡ぐさまは大変なものでした。帰りの電車混むのがいや、とかそういうのがなければ最後まで聴いてゆきたかったです。
一方で、東京ブラボーが回顧的というか、あまり新鮮味のない音楽を奏でており、世代的にちょっとずれているため、あんまり面白いと思えなかった。再結成ものってそういうところあるよね…。リアルタイムの人が懐かしむための、往年の曲をそのままで、というほうが一見盛り上がりはするけど、厳密に言えばやっぱり、昔の曲を昔のアレンジでやったら、やっぱり古く聴こえて当たり前なんだと思う。時間が経って、その間にありとあらゆる音楽のスタイルは試されて、消費されている訳なので、当時いくら斬新だった音楽も、今、普通に聴いたら陳腐さを孕まない訳はないというかね。
だから、鈴木慶一が善し悪しを別にして進化や変化を続けていることもそうなんだけど、やっぱりあの年齢まで、自分のやりたい音楽で食べて来ている人たちが集まっていたあの場は、戦い続けている人たちの場だったんだなあ、と思わされたことでした。シナロケのように、まったく変わらず続けることも、それはそれでひとつの戦いなんだろう。どっちもすごい。
…ああ、それで言えば、パンツ見せ関係者に邪魔されたリリーさんの弾き語りはすごくよかったのです。声が細いので、何を歌っているか、ちゃんとは全然聴こえなかったけど、あのメンツの中で、あのリリーさんが、あの姿勢でステージに立って、おちゃらけもせずに切々と歌い続けた、あれは非常に美しい時間だったと思う。安斎さんだってそうだけど、歌わなきゃいけない人じゃない訳だから。今更、人前でああやって歌わずにはいられないなんて、偏っているとしか言いようがないけど、そこが胸に響くところでもあるってなもので。しかもリリーさんは何度も、「サマソニに行かずにこっちに来た皆さんは…」というフレーズを繰り返していたんでした。ははは。もう、全体的にたまらん。
なんかとっちらかった感想になってしまったけど、そういう感じで楽しかったし、面白かったけど、イラっとなるところも相応にあった。そんなイベントでした。天気が崩れず、灼熱すぎず、だったのは助かったな、雨男がいないフェスは平穏ですね。にこにこ。