ゲキシネ「髑髏城の7人〜アカドクロ」

土曜日に観て来た。いやあ、面白かった! 古田新太に魂を抜かれて帰って来たね! あんな変なヅラを被らされているのにどうしてあんなに格好いいのでしょうか…派手な着流しの裾をばっとたくし上げての殺陣では、白くてむっちりした太腿がエロいったらない。いえ、普段の古田さんの太腿なんてただのロース塊にしか見えないのだけど(ひどい!)、役に入って殺陣を切っていると、あんなに精彩と色気がほとばしるというのがまったく不思議でならない。どういう生き物なんでしょうかあちら。「浮世の義理も昔の縁(えにし)も、三途の川に捨之介だあ!」つってバーン! の大見得が素晴らしくって、あんだけ恰幅いいと見得も決まって格好よいったらないなあとぽーっとなった。
また天魔王サイドは悪古田、という感じで、これまた相当にツボに入った。古田さんの殺陣は重い…って、「朧の森に棲む鬼」ですごく思ったんだけど、動きが鈍いという意味ではなくて、太刀の一振りがものすごく重たく見える、ということ。なんか、重い刀を使っているように見えるっていうか。実際は軽い棒切れを振り回している訳じゃない? だけど、それをちゃんと、鋼とか鉛とかでできた武器であるように見せる振り、っていうのが、古田さんの殺陣な気がする。速くなるポイントが一瞬で、それって実際に重いものを振ったときの加速の仕方に近い感じに見えるんだろうなあ。朧は、阿部さんの軽くて速い殺陣と、染五郎の振りが大きくて華やかな殺陣と、重い古田さんの殺陣、っていうバランスがめちゃくちゃよかったけど、単体で見たら、一太刀でバーン!と重くて、充分速い、強い殺陣だなあと思う。正直、殺陣のシーンに関してはカット割りが邪魔だ!って思った。引いた画でじっくり見せてほしかったです。ゲキシネの限界をこんなところに感じた次第。あと、最後の対決の殺陣のシーンで、古田さんが太腿かなんかをぽりぽり掻いているところが映り込んでてかなり笑ってしまったりね…そういうところもハマるから怖いひとですよ。くくく。
あと、捨之介の声の高さが気になっていたんだけど、天魔王が出て来て、やっと落差を出すためだったんだなーと得心した感じ。なんか捨之介は、佐藤仁美さんの沙霧との相性がすっごくよくって、女らしく育っていないばかりか、実は結構な重圧を抱えた立場を生きて来ている沙霧を、敢えてただの女の子として扱っている感じがめちゃめちゃよかったのだ。こっちが勝手に思っている古田さんのイメージに寄せて書いてある役だったってことなんだろうかな。ああやって、女性全般をあいしているのに誰かひとりのところには留まらない感じ、洒脱でふざけていて女にだらしなくて、だけどいつもそこに長く居座る気がなさそうな感じ。どハマリ役だった。堪能。
…と古田話で締めようかと思ったんだけど、水野真紀ちゃんがびっくりするくらいよかったことだけはメモっておきたい。いやあ、意外だったけど新感線映えするわあ、あの人! 長身と美貌を生かした非の打ち所のない「男装の麗人」。気品と哀愁と矜持と狂気…天魔王とのシーンエロかったなああああ。正直、こんなにいい役者さんだっていうのは、これまでに出演舞台を生で観たときには一切感じなかったことだったので、本当に驚いた。っていうか、森蘭丸を「男装の女性」として描く(しかもそこに余計な説明を挟まない)あたりが結構面白いなーと思ったけど…信長が先に逝ってしまった、というくだりとか、もっと恋慕っぽく強調してもよかったんじゃないのかなあと思いつつ、考えたらアオドクロではこの役、女優じゃなくて池内博之くんが普通にやってるんだもんね。あんま過剰にするとあざといか。ほんで初演は女優、再演は粟根さん…と困ったときの Wikipedia*1 が教えてくれる。うーん、なるほど。役の描き方に変遷があったのかがちょっと興味あるかも。
替え玉を犠牲にして生き延びている沙霧が、替え玉として影のまま生き残ってしまった捨之介を救いたいと思う、というシーン、それから、仲間を殺されて混乱するじゅんさんに、坂井真紀ちゃん演じる太夫が「立派な死に際だった」「あんた、いい部下持ったね」って言うシーン。このへんでなんか、唐突に涙が出て困った。涙もろさ復活か…? あと、聞いた話ではこの公演、途中でラストの解釈が随分変わったんだそうで。うう、ゲキシネで使ってないラストも観てみたかったなー。
どこで収録した映像をゲキシネで使っているのかは分からないのだけれども、とにかくあの、舞台の向こう側の奥行きの深さはものすごく、あれって50mくらいないですかね? ラスト、捨之介と沙霧がその深い奥行きを、向こうのほうまで去ってゆくときの背中を見送る感じ、終ったなあ、という感じと、拍子木がひとつ鳴って空気がばっと変わって、さっきまでと同じ格好なのにまったく違う顔になった2人が、今度はこっちを向いて走ってくる、っていう、それを見たとき、あの奥行きを確保したことが最大の演出効果だなあと思った。うう、面白いわああの演出…。
ちなみに来週アオドクロもゲキシネ観るんだけど、予告観たら全然トーンが違っててびっくり。再度 Wikipedia によれば、ああなるほど、演出趣向が全然違うんですね。楽しみだなー、染五郎の天魔王。悪エロいんだろうなあ。お友達は皆、口を揃えて「三宅さんもよいよー(はあと)」と言う。うふふ、楽しみ楽しみ。
…あ、ちなみにバルト9、メタルマクベス上映館とは違う部屋(部屋?)でした。もっとコンパクトな館(館?)だった。でもなんか、横が一列20席近くあるのに、真ん中に通路がないために出入りがむぬすごく大変だった。あと週末はエレベータが激混みなので、上映開始時間より随分余裕を持って行かないと死ぬかもしれない。わたしは予告が終わるタイミングでやっと会場に入れたので、周囲の方々にひどく迷惑をかけてしまった。これからの方要注意っす。