• 本日、日舞の新年会が無事終了。身内だけの簡単な発表会も兼ねているので、10年以上ぶりに人前で踊ったよ…疲れた…。
  • わたしは花柳流の名取なんだけど、名取試験受けて合格して、名披露目で「八百屋お七」を踊って、そのあと1年でお稽古を止めておった。理由は母がセンセイで、親子関係と師弟関係の割り切りがうまくできずに、ものすごいストレスだったから。子供の頃からずっと嫌々やっていたので、一個人として母との関係を考えて、24で「もうお稽古したくない」と真面目に話し合って、お稽古を止めたということだったんだけども。
  • 母は本当に日舞が好きなヒトなので、娘のわたしがお稽古が好きじゃない、止めたい、と言ったとき、たいそう悲しんでいたのだと思うけど、「あんたはまあ、しょうがないわよね」と諦めていた風でもあった。名取になるまでにそれなりにお金もかかっていたはずだけど、それも母のエゴだったと言えなくもなくて、その時点ではお稽古を止めることでしか、わたしは自分の気持ちの整理がつかなかったし、母もその点を理解して、残念がりながらも納得していたと思う。それから10年、わたしは日舞については、演者としては一切関わらず、会の手伝いとかしかしてなかった。間、6年くらい実家離れてもいたしな。
  • でもおととし? 実家に戻って、去年からお稽古を再開した。10年ぶりなので、そりゃあもうひどい有様で、でも、この10年でわたしもたくさん芝居を観て、舞台で何かを演じるということについて、10年前とは随分違う感覚を持つようになったので、踊ってみたら、意外と面白かった。つっても、身体は本当についてゆかなくて大変だったんだけども。
  • 10年分を取り戻すことはできないけど、また一から身に着けたいなあ、とお稽古を始めた理由は、4年に一度やっている大ざらいが今年の10月にあって、そこで、今月で90歳になる祖母と一緒に踊れたらいいなと思ったからだ。祖母は60代になってから実娘であるわたしの母に習ってお稽古を始めたヒトで、健康のために、とか、そういうレベルであっても、90になるまで欠かさずお稽古を続けていて、楽しんで踊っている。一人でもずんずん歩いているし、本当に元気なんだけど、それでも90だから、いつどうなるか分からないなあとも思う。
  • わたしも、やっと親との葛藤とかよりも、自分のために楽しんで踊ることができるようになったので、祖母と一緒に踊れたらなあ、と。今年の大ざらいは踊れても、4年後はどうなるか分からない訳だしね。今回が最後のチャンスかもしれないから、何とかできたらいいな、と思っている。こういう風に自分が思えるようになったことが、自分でなんだかすごいなあ、と思う。
  • わたしの周囲には、独身で仕事をして、自分のお金や時間を全部自分で使っている20〜30代のヒトがたくさんいて、一人暮らしをしている頃は、その人たちと同じ感覚で自分もいたんだけど、おととし? に実家に戻ってからは、誰かと一緒に住むってことは、自分の持ってるもの(お金とか時間とか)が自分だけのものではなくなるってことだ、というのを思い出した。
  • 最初は、周りのヒトみたいにできなくなった自分の状況にちょっといらいらしたりもしていたけど、でも、その分、眠れない夜とかにも、今自分がひとりじゃなくて、隣の部屋で両親が寝ている、て思うだけでちょっと気持ちが楽になったりもしているし、仕事から疲れて帰って来たときに、母の作ったごはんがあったりもする訳で、そうやって自分はずっと育って来ていた訳で、そうやって、誰かと毎日一緒に暮らすってことの意味とかに、改めて思い至っていた。
  • 日舞も、お稽古を始めたことで、土曜日が丸々一日自由にならなくなったり、ちょっとお金がかかったり、いろいろ面倒はある。でも、それを「面倒」って思って切り捨てたとしても、その分手にした「自分の時間」とやらで、そんなにすごいことをできるのか、っていったらそんなこともない。そのことが分かっただけでも、お稽古を止めて10年、実家を離れて6年いた意味があったのかなあ、とちょっと思ったりもしている。
  • 実家を離れていた6年間、自立していたつもりだったけど、「今更誰かと一緒に住むなんてできない」「自分の時間がなくなるなんて我慢できない」とか言っていた自分は、自立してるつもりで、実はできてなかったのかも。本当の意味で自立していないと、誰かと一緒にいられることのありがたさとかを理解できないのかもしれない。お稽古に対してと同じように。
  • …なんつうことを、会が終わって家に帰って着物を脱いで、ベッドにどーんと寝転がって、だらだら、うとうとしながら思った。疲れた。でも終わった。よかった。
  • 年始から風邪で寝込んでいて、その後仕事のちょっとしたヤマがあって、今日のこの新年会まで、ばたばたが続いていたせいで、先送りにしてたことがこまごまたくさんあったんだけど、やっとこれで手をつけられます。不義理をしている皆さん、もう少々お待ちを。とにかく終わったのだ。はふーん。
  • 今晩はゆっくり寝ます。おやすみなさいおやすみなさい。