3月のライオン(1)/羽海野チカ

3月のライオン (1) (ヤングアニマルコミックス)

3月のライオン (1) (ヤングアニマルコミックス)

買った。読んだ。
初回と2回目までは掲載誌を買って読んでいたんだけど、3回目を買い逃してからは諦めてしまっていた。ので、続きが読めていろいろ腑に落ちるところもあって、どういうトーンなのか掴みきれずに読むのを止めていたのが補完されて、ものすごく安心した。うん、すきだわたし、この漫画。
ちょっと前に羽海野さんが web 日記で、ご自分には「『楽しい事、したい事 を好きなようにはしてはいけない』という不思議な呪いのようなモノ」がかかっている、と書いてらしたのがとてもとても印象的だった。この呪いというか罪悪感? は多分、ハチクロのはぐにも、この物語の零にも共通したもので、そういう感情を持つのに充分な設定を、羽海野さんは、どちらの物語でも主人公に背負わせているんだなあ…と思うにつけ、その罪悪感をどうやって越えて、ひとは幸せになってゆくのか、っていうところが多分、羽海野さんのテーマというか、漫画で描きたい世界の根底にあるもののように感じた。
なんかね、わたしは零に幸せになってほしいなあ、ってしみじみ思ってしまったよ、1巻読み終わったとき。漫画としてうまいかどうか、とか、そういうところを結構気にしがちなわたしだけど、羽海野さんの漫画はなんか、批評眼を超えたところで読みながら気持ちが入ってしまう。それがハチクロに限られたマジックなのではなくて、これから先に生み出されてゆくのであろう他の作品でも期待できるものなんだ、と思ったら、すごく嬉しくなって安心した、という感じだった。えらそうですが。
あかりさんちの姉妹がみんなものすごくかわいいのね。あかりさん、初回を読んだときに「女性漫画家が描く巨乳キャラ…!」と軽く衝撃を受けたんだけど、いくつの設定なんだろう。20歳をちょっと越えたくらい? イメージでは25〜6歳くらいになってそうだけど、モモちゃんが随分年齢離れてることを考えると意外と若いんじゃ…って書いて気づいたけど、長女があかり、次女がひなた、三女がモモ、って名前のバランスが変だ。もしかして、モモちゃんだけおかあさん違うのかな…あかりさんちは、お母さんとおばあちゃんの話が出てくるけど、お父さんの話が出てこないし。うう、ありそう。まだ何か悲しくなるような事情があるんだろうなあ…。
二海堂くんがすごく、ものすごくすき。零と対局する前の、気合が入りすぎて「別の漫画*1みたいになってる」顔が最高すぎて悶絶した。モモちゃんにポドロ呼ばわりされたとき(ここのモモちゃんのタイツまるみえな格好がものすごくかわいい)の「小さき者よ、名をきこう」とか、ほんとうに、すごくいい。彼にも影というか、背負っているものがあって、そのせいで彼をいとおしく感じるというのは、悪趣味かもしれないけど、実際読者というのはそういうものなので、そこが羽海野さんの「うまさ」だな、とつくづく思った。人を徹底的に描く感じの「うまさ」。その「うまさ」の積み重ねが、読んでるこっちを物語の世界にちゃんと連れてゆくんだろう。
ちなみに、ハチクロのときも最初のほうでは一人称というか、語り手が真山になっていたのをコミックス出しなおす際に竹本視点に描き換えていたり、理花さんのことを修ちゃんが「リカちゃん」って呼んでるところがあったりしてたけど、この物語でも、1巻では、あかりさんとひなたが零のことを呼ぶ呼び方がいろいろ混ざってるのが気になった。「零くん」「零ちゃん」「桐山くん」が混在してるんだよね。呼び方っていうのは距離感だと思っているので、わたしはこういうところがすごく気になる。多分、話が進んで描かれる関係性が深まってゆくにつれて、呼び方も安定してくるんだろうけど、羽海野さんの漫画はキャラクターの性格にあまりブレがないのに、関係性は明確に定義して描き始められている訳じゃない、ように見えるのが、すごく興味深かったです。