湯川潮音「弦とわたし」ツアー2008/九段会館(2008.3.28)

九段会館で潮音ちゃんだなんて! と、この公演のことを知ったときに舞い上った。そしたら恋人からも誘いがあって、2人で先行で申し込んだら*1なかなかの良席、がっつりがっしり楽しんできました。潮音ちゃんは本当に、野に咲く真っ白いお花のようだったよ。
サポートで桜井芳樹さんや徳澤青弦さんが登場して、なんとも不思議な気持ちを味わったり。というのも、櫻井さんは一時期、わたしが青山陽一さんのライブに通いつめていたころに BM's(ブルーマウンテンズ)という名前で緩くメンバーが固定された青山さんのバックバンドに参加していたし、青弦さんはいわずと知れた、ラーメンズ本公演の度に独特のオリジナル曲を提供しているチェリストだし、いろいろ、自分が通ってきたなつかしいものが突然、ふっと鼻先に匂う、みたいな感触があって、しみじみ、年齢取るとおもしろいなーとか思ったりしていた。
潮音ちゃんは、例えば「裸の王様」とか「ギンガムチェックの小鳥」とかを演奏しない…という、ある意味での商売っ気のなさが実にはまっていて、かと思えば「Turn! Turn! Turn!」とか急にやりだしたりして最高だった。このうた、The Byrds の印象が強かったけど、オリジナルは違うんですね。ライブで青山さんが誰かとうたっているのも聴いたことがあったなあ、と妙に青山さんを思い出しがちなめぐり合わせににやにやしたりもしてた。
潮音ちゃんはこのうたを、聖書の一説がうたになっていて…と説明していた。それで思ったんだけど、彼女はなんか、「渡り鳥の3つのトラッド」とかでも感じさせる、神話的というか寓話的というか…それも大陸的な、欧州的なにおいがするうたの世界を持っているなあ、って。特別に何かの宗教に依っていると思う訳じゃないんだけど、どことなく、目に見えないものを信じたり、助けを受けたり祈りをささげたりするのを普通のこととして暮らしている文化圏のひとたちのような、本質的なつよさが感じられるうたに思えるのです。
丁度この間、夜中にテレビで「リンダリンダリンダ」が放送していて、あの作品での潮音ちゃんはアカペラの「風来坊」で場の秩序を一瞬でさらうような「歌姫」を演じていて、その歌声の持つ不思議な力は、短い時間だけしか登場しない役だったのに、ちゃんとしっかりスクリーンを通して客席に伝わってしまっていたことを思い出していたところだった。圧倒的なつよさというか、力というか、そういうのが、彼女のうたにはある。
あと、本質的に自由だなあとも思うんだけど、使う楽器や、言葉や、譜割りやなんかに制約を持たずに音と戯れている感じがするのですよね。これはわたしが惹かれるミュージシャンの特徴のうちのひとつだけど、ジャンルとかの「枠」を逆手に取る人か、捉われてない人か、どちらかがすき。潮音ちゃんは後者かなーと思う。言動がおもしろい、とか、そういう意味じゃなく、音楽に対する精神がとても「自由」なように見える。そういうところが、見ててもう、たまらない気持ちになっちゃうところ。
ルックスや佇まいやお洋服(mother のステージ衣装が素敵すぎ…!)がかわいい、とか、それはそれで事実なんだけど、それだけじゃない…異国の花みたいに、ただ見てるだけでどきどきしてしまうんだもの。歌声や歌詞のちょっとした変さ*2も、ついてまわる漠然とした寂しさや、そのせいで際立つつよさも、全部全部がいとしくて胸がぎゅってなる。ガーリー趣味ですきだなあと思うだけではなくて、彼女の存在そのものがわたしにとって、うたごえの特異に負けず劣らずに奇跡的で圧倒的に思えるのです。2時間弱のライブはとにかく至福の時間で、あの時間を丸ごとしまっておいて、時々取り出して眺めたいような、そういう、宝物みたいな気持ちを味わいました。5月には明日館でライブをやる*3んだそうで、平日だから恋人は一緒に行けないんだけど、ひとりでもがんばって行ってきたい。でもちょっと日程的に難しいかな…しばらく悩もう。
あ、ちなみに、青弦さんがちょうイケメンでびっくりしてしまいまして! 白シャツに黒いタイ、細身の長身、さらさらの長めの黒髪が目にうっとおしくかかって、長い指がチェロの指盤を忙しく駆け回る…みたいな。なおかつお顔も大変端正でらして。メガネ好き女子の85%くらいにとっては「どストライク」なんじゃないかなあ、ああ、いいもんみました。ごちそうさまです、ごちそうさまです…!

*1:我々が初めて会ったのがくるりの公演直後の武道館前、初めてまともに会話したのは九段会館屋上のビアガーデンだったので、思い入れのあるエリアで潮音ちゃん! ってことで変に盛り上がったんでした。

*2:すきなひとのことをへんなものに喩えたりするので申し訳ないです…といいながら「巻貝とわたし」という新曲をやっていておかしかった。あと、ひとりで高尾山に登って鳥の糞を浴びて雨に打たれた…とか。

*3:「3ヶ月連続講堂ライブ」だそうな。講堂はだいすきなのでツボったー。