ケラさんのブログにおける「ラーメンズ」

http://blog.livedoor.jp/keralino/archives/65032973.html
これまで静観してたけど、ケラさんが(携帯で)ここまで書いてるのを見て、なんかなああああ。と思った。
わたしの周囲も含め、ケラさんが「ラーメンズ」の名前を出してた元の、エイプリールフールのエントリに過剰反応しているラーメンズファンが多くて、それに対して、なんでなんだろう、ってちょっと呆れ気味に思ってました。だって、ケラさんの元エントリ、まともに読めば文脈として、ラーメンズはたまたま引っ張ってきた例にすぎないんだってことが、よっぽど脳足りんでないかぎりわかるはずじゃないか…他の人の名前だったら絶対誤読しないのに、「ラ」「ー」「メ」「ン」「ズ」って文字が書いてあるだけで脈拍数あがって、かっとなってしまうんだよねえ。それが、いわゆる「ラーメンズファン」なんだなあ、っていうこと。わかってたけど、改めてまた、確認させられてしまって正直萎えた。
だってね、それこそがケラさんの書いてる「他者不在」の本質な訳で。なのに、なんで自分たちでそれに気付けないんだろうかなあ、っていうね…うーぬー。
ラーメンズファンはまず、小林賢太郎以外の作家にもっと敬意を払うべきですよ。小林さんだけが戦ってる訳じゃない。ケラさんは、小林さんが無名の大学生の頃から戦い続けて、今なお現役に立ち続けている作家な訳で、そういう人が、単にご自身のマニフェストとして「こういう笑いを自分はよしとしない」という意思表明をしているだけの、ちょう個人的な文章に、偏った視点から、ケラさんのことをあまり知りもせずに、ああだこうだと言うのは相当幼い行為に見える。
でも、その幼さを持っている状態で観ると、小林賢太郎の舞台上での振る舞いは、ズガーンと脳天に響くような唯一さを持って迫るのも事実ではあります。若干催眠の気があるというか。だから、その幼さに気付けるような「他者」の視線を持った人に対して、ストイックに戦いを挑むようなやり方を小林さんにはしてほしいよネーとわたしなんぞは思っているんですが…ここ2年くらいの間に、生で観た小林さんの「作品」には、あまり、そっちの種類のストイックさは感じられず、むしろ期待してる客に、期待どおりの味のする飴を、期待以上の分量ばら撒いているように見えて、あんまりわくわくできてないんでした。多分、ケラさんが書いているのもそれに近いことのような気がする。
でも、元々小林さんは「わざわざ劇場に足を運んでくれるような人しか相手にしないで済むようにしたい」というようなことを言ってた訳で、捉えようによったら、確信犯的に「他者不在」の状態を作り出しているとも思えるし、彼がそれを志向してやってるなら、しょうがないんだろうと思う。だとしても、わたしは多分、この先も彼が新しい作品を発表すれば、それを観たいと思うと思うんだけどね。彼がどこを向いているのかに対して、まだ関心が全然残っているから。
彼が何を考えているのかはわからないし、わかりたい訳でもないんですが、わたしもどっちかっていうと、「他者」に対しても、観たことのない笑いでひれ伏せさせてやる、みたいな闘争心のない「笑い」はあまり居心地がよくなく感じられる。そういうやんちゃさを、小林賢太郎にはキープしていってほしいなあと思います。勿論、以前には、もらえる飴ならどんな飴でも喜ぶ下僕だったこともあったので、あまり偉そうなことは言えないですけど、来週観る「ポツネン」がどんなスタンスでつくられているものなのか、割と温度低めに楽しみにしている次第です。
…あ、あとなんか、ラーメンズで舞台観始めた、みたいな人に限って、その後他の舞台も観るようになってこの「他者不在」っぷりに気付いたら、てのひらを返したように、小林さんのことをケチョンケチョンに言い出したりする傾向もある気がする。それはそれでなんだかなあ…て思う…彼自身がやってることはそんなに変わってない気がするんだよね、向いてる方向は変わったのかもしれないけど。なのに、かつて自分の視野が狭かったから、ラーメンズに夢中になった、ってことを棚にあげて、小林さんが面白くなくなった、みたいなことを声高に言うのは一種の逆ギレ的なムード。あんまりフェアじゃないなーと思うことがあります。
一方では、そういうウブな観客をオトすのが小林さんのうまさっていうか、吸引力の本質って感じもしていて。だからこの構図は多分、この先も繰り返してゆくものなんでしょうね。わたしも、ラーメンズ観る前に舞台はそれなりに観てたのに、一瞬、ぐわっと目が眩んだもんね。そのかっさらい方はやっぱり、あまりいいものだとは思えないけど、すごい、とは思う。純粋に。
願わくば、「他者」の視点を得てしまった観客に対しても、等しく価値を提供する舞台表現を、この先の小林さんが志向していってくれることを。そうしたら、わたしはずっとラーメンズを好きでいられるなあ、って思いました。