バクマン。(1)/小畑健・大場つぐみ

バクマン。 1 (ジャンプコミックス)

バクマン。 1 (ジャンプコミックス)

漫画家になりたい少年たちの物語、いわば「まんが道」系統とでも言いましょうか。少年漫画久々に読んだ。
面白いのは、主人公が「原作担当と作画担当のコンビ」という二人組な点、その二人が元々の仲良しとかではなく「成功できそう」という視点でお互いの資質を選別した結果生まれたコンビである点、漫画家としての成功のイメージで「アニメ化」までを見越している点、などなど。ものすごい現代的というか、今の漫画業界の内幕を紹介している要素もあって、そういう点は単純に面白かった。
しかし、少年漫画を読んだのは本当に久しぶりで…青年誌の漫画に対してはぜんぜん違和感ない(モーニング愛読中)んだけども、少年漫画の方法論がなんだか新鮮で、読んでてポカーンとなりました、物語があんまりにも都合よすぎて。
まあ、少女漫画も青年漫画も「都合よすぎる」の「都合」のポイントが違うだけかもしれないけど、少年漫画の都合のよさは、主人公たちのチャレンジにプラスになるものばかりで、男気を証明するためのツールがどんどん降ってくるところがすごいもんだよ、と変に感心した。
主人公の死んだおじさんが漫画家だったために、主人公はアンケート至上主義の少年漫画業界の裏事情を14歳にしてみっちり知っていたり、そのおじさんが使ってた仕事部屋が温存されてて主人公が自由に使わせてもらえるってことになったり、おじさんが漫画を描くモチベーションとしていた初恋の女性の娘が主人公の想い人だったり…まともに読んだら、えーっ、となることが山積み。ちょっと笑ってしまったよ。
しかし、そこまでして「夢」描かないといかんのか少年漫画、という点では、ある意味での過酷さを目の当たりにしたなあと思う。この(傍から見たらでたらめな)チャレンジ精神に同調して読んだらかなり楽しめるものなのだろうという感じはすごく伝わった。いかんせん、同調する方法をわたしは知らないので、楽しむことはできなかったけれども、なんか勉強にはなった気がした。
ただ、こういう「夢」至上主義に同調できんと思っているわたしのような人でも、作品の世界に引きずり込む力があるのがすぐれた少年漫画なのかなーという気もしていて、だとすれば、この作品は1巻時点ではまだそこまでいってないかな、というのが率直な感想。まあ、わたしが少年漫画読むのが下手ってだけなんで、いいんですけどね…「ああ、きっとこれ、少年漫画としてよくできてるんだろうね…」っていう、遠巻きにうんうん頷くだけで終わってしまってちょっと寂しかったです。
あと、なまじ「漫画家という職業で成功する」って点にフォーカスしている物語なので、10年以上社会でふつうに(対外的な折衝とかも混じるような種類の)仕事を続けてきた中年にとっては、ビジネス的にどうか、っていう視点を手放して読むのはやっぱ難しい、ってことがわかった。だからわたしは青年漫画のほうがピンと来るんでしょうね、島耕作とかね(真顔)。
この漫画は、主人公たちが少年のくせにビジネス意識して夢と向き合っているところが面白い、んだけども、その割に彼らを取り巻く環境に非現実的な要素が多すぎて萎え気味というか。週刊少年ジャンプのシステムに関係する要素だけが現実的で、あとは全部非現実的っていうのがすごいなあ、と思った。働きマンを少年漫画でやんのは無理! ってことなんだろうけどさ…なんかね…。
ともあれ、わたしにとってはなじみにくい価値観ではあれど、その価値観においてはものすごくよくできている漫画なのだろうなーという感じはしました。何より、週刊連載でこの密度で書き込んであるっていうのがすごいなあと。少年漫画の真のおそろしさってそういうところかも、って思った。いやいや、勉強になりました。