狂気な作家のつくり方/平山夢明・吉野朔実

狂気な作家のつくり方

狂気な作家のつくり方

出たときに買いそびれた、と思っていたけど、今年入ってから出た本だったんですね。「Period」の3巻の余韻を引きずっている状態で本屋店頭で出くわして購入。
や、本が悪いんではなく、わたしが悪いっていうのに尽きるけど、わたしは、

  • 平山さんの作品を読んだことがない
  • 吉野さんの作品はエッセイも含めてほとんど読んでいて、20年以上追っかけている

という人間なので、そのふたりの対談、ということだとバランスが悪くて楽しみにくい部分が…いかんとも。
この対談、平山さんがこんな面白いものを書く背景として平山さん自身がどれだけ面白い人なのか、というところに重点を置いたもの(タイトルのとおり)なので、平山さんの作品を読んだことがある人のほうが楽しめるんだろうなーと思った。または、平山さんにも吉野さんにも同じように興味がなくフラットに読める人、か。なんか読んでて損した気持ちになった。しょんぼりです。
でも、平山さんの強烈エピソード(幼少時代に家の近くに手首が落ちていて、おまわりさんが「誰のものですか?」と拡声器で言っていたという話、ダンボールの中に入ってごろごろ転がって遊んでいたら友達が廃品回収のトラックに轢かれて血を流していたという話、等々)は炸裂してたし、映画や編集者のくだりなんかはものすごく面白かった。吉野さんの言うことは大半、知っている…というか既視感があるような話が多くて(幼少期に自転車に轢かれた話、死ぬのが怖くて母親に「わたしより先に死なないで」と言ったという話、もっと年寄りもまだ死んでないから大丈夫、と自分に言い聞かせるときの「年寄り」の例が佐藤栄作だったという話、等々)(こんな風に、具体的なところも吉野さんの話のほうが自然に頭に残ってしまっている)(なぜならそれはマニアだからです)さほどフレッシュな感想はないんだけれども、平山さんは語り口含め、異様なバイタリティがほとばしっていて、ああなるほど、こういう人は確かに面白いわあ、と思わされた。つか、川崎って…そんな街…?
って書いてて思い出したけど、そもそも平山さんとの初対面のときの話も、吉野さんは「本の雑誌」シリーズのどれかでエッセイ漫画にしてたんだった。だから、この二人の会話そのものにもまた既視感を感じちゃうってことなんだろうなー。マニアって損だわホントに、客観視ができなくてさ…。
ともあれ、平山さんの作品を読んでみようかな、という気持ちにさせられたという点においては、この本、よくできている、ってことかもしれないです。平山さんの作品好きな人の感想が知りたい。