GENTE(3)/オノナツメ

GENTE 3 (Fx COMICS)

GENTE 3 (Fx COMICS)

リストランテシリーズのテレビアニメが4月から放送するそうで、こんなに空気感が魅力の作品を深夜アニメにしちゃうのってすごい勇気! と驚いたばかり。「3巻出てるよー」と夫に教えられて焦って買った。
ちなみに、挟まっていたしおりはテオでした。
3巻の感想を一言で言うなら、「クラウディオの出番がすくない!!!」ということ。それはつまり、ニコレッタの出番も少ないということでもある…と思い至って、あれ? となって、1巻2巻と「リストランテ・パラディーゾ (f×COMICS)」をざっと見直して納得。このシリーズ、物語の時系列的には、

GENTE(1)

GENTE(2)

リストランテ・パラディーゾ

GENTE(3)

となってる訳ですな。そうだ、だから「GENTE」は2巻で完結したんだと勝手に思ってたんだわ、わたし。納得。
物語としての時系列順に考えると、前半2冊はニコレッタの登場以前*1の物語で、後半はニコレッタ登場以降の物語になっている。執筆順では一番古い「リストランテ〜」はニコレッタに視点を置いているから、非常に一人称的で、彼女にとって特別な存在であるクラウディオにピントが合った状態で描かれた作品になっているんだけども、これは後に描かれた「GENTE」の2冊の持つ群像劇としての魅力とはちょっと違っているなあ、という印象。
「GENTE」も各篇で入れ替わりで主役として描かれる人がいて、そこで描かれている密度はページ数が短いからといってぬるいってことは全然なく、きっちりそれぞれのドラマを描いていて、ほれぼれするようなうまさではあるのだけれども、そこは三人称の小説のような「よくできた」感じがあって、あまりパーソナルに気持ちが動くものではないような気がする。ああ、いいなあ、うまいなあ、とため息が出てしまうけど、胸がぎゅーっとなる感じはない。
その点で、「リストランテ〜」の一人称は、少女漫画的な感情移入を誘うようなものじゃなく、オノさんらしいクールさはあるのに、なんとも気持ちにどすんと来るトーンになっている。というか、わたしにとってはそうなんです。具体的には、ニコレッタとクラウディオの関係性が大好物。だから、シリーズ全作大好きだし、「リストランテ〜」で脇役だったキャラクターたちが「GENTE」で丁寧に掘り下げて描かれていることが嬉しくはあれども、ニコレッタ登場以前の物語に物足りなさも少しだけ感じていた。なので今回、「リストランテ〜」以降の時間が描かれている3巻に、わあって浮き立つものがあったという次第です。
が、わあってなったのは最初だけで、時系列こそ「リストランテ〜」後だけど、「GENTE」の群像劇のスタイルは3巻でも続いていた訳ですね…ニコレッタの一人称ではなかったので、そこが少々寂しかったです。「リストランテ〜」のラストであんなに魅力的だったクラウディオが、なんかぼんやりした人に戻ってしまっているよ…! そこが実に残念というか、まあ、そのほうが話が長持ちさせられるのわかるんだけどさ…と小石をつま先で蹴るような気持ちになりました。
でも、同じ設定、同じ人物たちを描いているのに、「リストランテ〜」と「GENTE」でこれだけ「文体」を変えられるのがオノさんのすごさだなあと思う。ほんとうにうまい。思わず唸っちゃった。
あと、これまで「金持ちのお遊びでルチアーノに色目を使う感じ悪い女めが…!」と憎々しく思ってたサヴィーナが、3巻ではものすごく魅力的でいとしい女性に描かれていてたまんなかったです。同時にルチアーノも男を(さらに)上げた感があり、こんなのずるいや! と思った。クラウディオのいいところももっと読ませていだきたい…!(悲鳴)ジジもオーナーも相変わらずかわいらしくて大満足。安心して続きを楽しみにできる気分で読み終えました。

*1:「GENTE」2巻のラストが「リストランテ〜」冒頭のニコレッタの登場シーンのバックショット。