三月のライオン(3)/羽海野チカ

3月のライオン 3 (ヤングアニマルコミックス)

3月のライオン 3 (ヤングアニマルコミックス)

2巻読んだときに感想が書けなかったんですが、3巻読んで、ああ、って思った。
1巻で、零の孤独がしんどくて、むーんとなっていたんだけども、2巻ではその孤独とかに足を取られて身動きができなくなっている零が描かれていて、なんというか…つらくてねえ、ああ、やだな、これはいやだ、って思って、感想とか書けずにおりました。史上3人目の中学生プロ棋士なんだから、天才のはずなのに、まだ16歳でずぶずぶ沈んでいくなんてつらすぎる。そういうのは苦手だなあ、と…ポドロ(二階堂)が救いだとは思いながらも、でもきっと、その二階堂も病気な訳だし、モデルにしてる棋士も若くして亡くなってるし…って、ホント、考えるとちょっとしんどくて。
でも、3巻でスミスさんがフィーチャーされていて、これは零の内面だけの物語ではなく、将棋界で戦う男性たち皆の物語になるのかなーと思ったらなんだか受け入れられるような感じがして、しゃれおつキャラっぽいスミスさんが、対局前に買ってきたもの直接ガツガツ食べながら棋譜勉強してるところとか、そのスミスさんをコテンパンにした後藤の感想戦の実直さとか、勝った島田さんのよれよれになった格好よさとか、そこにひたと寄り添ってうれし泣きする二階堂のひたむきさとか、そういうのが全部、一気に立体的に迫ってきて、勿論しんどさはしんどさとして依然残ってはいるんだけれども、それが零だけのしんどさではないんだ、ってことがぱあって見えて、この漫画ってこういう漫画なんだな、っていうのが分かって楽になった感がありました。
2巻で、松永さんが最後の?対局を零としたとき、零は自分を知らなかっただろうけど自分は零をよく知っていた、っていうところ、そこまでは零目線の物語だったのが、容赦なく零を客観視する目線が出てきて、「若く美しい死神」呼ばわりされることも、本人にしたら理不尽だろうけど、周囲から見たらしょうがない、っていうのがじわじわと突きつけられてきて、つらいな、切ないな、って思った。でも、同じように客観視しながらも、零に対して友情とか愛情とかを持っている人たち(先生とか二階堂とか)の言葉はやさしい訳なので、そのやさしさで零が救われたらいいなあ、とか、やっぱり思ってしまうんでした。
先生の言葉がとにかくよかったな。他人を頼る勇気というのはやっぱり、ホントに大事だから、早く零がそのことに気付けばいいなと思う。