くるり鶏びゅ〜と/V.A.

くるり鶏びゅ~と

くるり鶏びゅ~と

視聴出たときに感想メモってたんだけど、アップしようとしたらテキストエディットが落ちてしまったのでアップしてなかった。フルで聴いて改めて。あ、ところどころ参加アーティストとくるりのコメントについても書いてますが、それはこちらに載ってるやつですよ。

赤い電車anonymass
なんかフレッシュで祝祭的、ワルツの頃のくるりが醸していた匂いを思い出したのは木管楽器と弦だからかな。ヴォーカルが入るとは思わずに聴いてたので視聴のときクリアな女子声に驚いた、が、♪ファソラシドレミファソ〜♪のハイトーンで盛り上がった、やあすごいね、楽しいね楽しいね! リズムが一番オリジナルに近く感じた、というか、オリジナルと同じ方向を指向している感じがしたんだけど、それってもしかすると電車感なのかしら? 最初の♪でっかい東京〜♪でチェロがじわーって入ってくるところなんか、すごい電車の加速感なんですよねえ、2コーラス目んところの♪でっかい東京〜♪も和音が複雑できらきらしてて、風景がどんどん移ろってゆく感じで気持ちがいい。リズムも音色も緩急があって、テンポが落ちるところなんて完全に徐行運転だし、そのあともう一度歌が入って来たあとは、音がふわーっと拡散してゆく感じが、トンネルを抜けて海のほうとかに着いて明かりがぶわー、みたいな空間の広がりを感じさせてすごい好き…って、ああそうか、京急は海のほうに出るんだったっけ、なるほどな!
ロックンロール/andymori
視聴で聴いたときはそのまんまじゃーんと思っていたんだけど、通して聴いたら大変によかったです。元曲がギターに重点の置かれていて、2本のリフの絡み合いが生むうねりがキモになっているのに対して、この人たちのロックンロールはドラムがものすごい、なんか歌ってるというか、ヴァースんとこなんてベースとユニゾンみたいになっててエエエ? ってびっくりした。ベースラインもすっごい雄弁で、むしろギターのほうがリズム楽器みたいになってるのとか面白いなあ、若くて志のある人たちなんだなあと。2コーラスめ、♪本当のやさしさがあれば♪を尻下がりに歌うのってライブでの岸田の歌い癖ですよね、音源では上げて歌ってるところ。あらあそんなところまでカヴァーしちゃって! とニヤニヤしました。なんか愛情がすごくてのぼせた。フフフ。
Baby I Love You/矢野顕子
音博で生で聴いていたので再確認に近かった。なんか考えうるアプローチの中で一番、他の人がやらないアプローチを取った、という感じがあって、こういう戦い方をするのがしみじみ矢野さんだなあと。ヴァースが6/8拍子になってるのを聴いてちょっと「すばらしい日々」のカヴァーを思い出したりした、あれはサビが6/8でしたが。展開んところの和音の豊かさと、そっからの切ないリズムがぎゅってなる感じで真骨頂、♪いつもごめんね♪の寂しい感じの和音も染みた。3曲めっていう曲順もいいなと思いました、矢野さんの存在感の扱い方として納得感があって。いろいろ、信頼関係があるからこそのチョイスが潜んでるなという印象で、そこも嬉しく、楽しく聴いた次第です。
ばらの花/奥田民生
まさかの打ち込み…誰しもが弾き語りスタイルだとおもっていたのに! まあ、この夏のフェスで民生のひとり股旅でこの曲やってたとか、音博でも岸田も一緒に出てきて2人でやってたとか、そういうところからの先入観なんですが、今出てる MUSICA で岸田と民生が対談してる(っつーか、させられている)んだけど、そこで民生が「PROTOOLS を買ったとき、打ち込みの練習の課題に『ばらの花』を使ってた」「俺の HD には何ヴァージョンも『ばらの花』が眠っている」みたく言ってたので、そっちかあ、と。元曲を聴いてやってる度合いはコンピ中一番という印象で、カヴァーっつうかコピーっつうか、自分の曲にしようという欲をきれいに捨ててるなあと思う、そういうアプローチも面白いもんですねえ。何より、ヴォーカルの真似度合いがすごくてびっくりよ、元々声質が近いっていうのもあるんでしょうが、歌い出しの声の出し方とか一瞬混乱した! 他の歌い方でやってみたら違ったってことなのかなあとも思いつつ、岸田が民生ヴォーカルの曲を歌うときに声の出し方の真似ちゃう感じの仕返しなのかもと思ったら笑えた。岸田の求愛に民生がどーいうリプライするのかと思ったら、あらやだ意外と正面から!みたいなネ…通して大変に真面目な歌声なのとか、聴いててそわそわします、つくづく不思議なカヴァーだと思う。中でもギターソロのコピり方に一番の熱量を感じた。
言葉はさんかく こころは四角/木村カエラ
よくできたかわいらしいアレンジで予定調和っぽくもあり。♪地下鉄は走ってく♪のところのトラックが雰囲気が変わるところはなんか、インバータ音にも聴こえて電車っぽい! とか、そういう小技の利きがいい仕上がりだなあと…でも正直、少々物足りないかな。不思議なのは、なんでこんな寂しい感じに聴こえるのか、ってこと。元曲はもう少しのどかな、牧歌的な感じがあったけど、夜中に女の子が一人、部屋で着飾ってぼんやり鏡を見て佇んでる、みたいな物悲しいニュアンスがあって、そんな中で♪つないだお手々を振り払うように♪なんて歌われるとどきどきする。しかしカエラちゃんはいい声ね、声がきらきらしてるから余計に寂しい感じに聴こえるんだろうなあ。しみじみ。
さよならストレンジャー曽我部恵一
民生に対してこちらはもう、思ったとおり、予想したとおりのアレで満腹です。つか元曲がそもそも、曽我部の曲みたいなのを作ろうとして作ったのかと思うくらいに曽我部的だったからなあ、アコギの鳴りのよさも、声のふくよかさも、高音のつやも、湿り気も、きっとこういうのをイメージしてできた曲なのだろうという風に聴こえてしまうのもしょうがないというか。♪テレビの中から♪のところの符割りの解釈の違いが面白いなあと思います、アコギ1本と歌だけでアタックの強い箇所を作る曽我部のうまさが際立ってる気がした。あと、曽我部が歌ってるのを聴いたら歌詞のよさを再認識した感があって面白かったです、♪ありがとう心から、紫陽花に同情を流し込む♪ってすごい。そう思うと、くるりはずっと少年〜青年期を歌うバンドだったんですね、曽我部が歌うと同じ曲でも大人の歌になのに。そういう意味でも「魂のゆくえ」が境目になるのかもしれないなあとか思った。
虹/ハンバートハンバート
1、2を争って好みだった! 各楽器間の関係もだし、男女の2声の関係もだけど、ダイナミックにぐるぐる役割が入れ替わってスリリングで格好いいったらない。ヴァースんとこの符割りが面白くて、こういうところも好きだなあとじんわり。この曲、阪神大震災のときに感じたことを元に書いたのだと岸田が喋っていたのを聞いたことがあるんだけど、元曲は混沌とか痛みとか諦めとかを強く感じさせるのに、ハンバートの虹はひどく乾いた、何もない荒れ果てた広いところにすっくと立っている1本だけの木だとか、そういうところをひたひたと歩いて行く人だとか、寂しさも過酷さもありつつ、たくましさのほうが前に出ている感じがしてぐっと来る。元曲でも重点置かれてる♪丘の向こうから♪んところのブレイクがすごく丁寧に、大事に扱われているのも好ましいです。大好き…!
ワンダーフォーゲル高野寛
ご本人がついったーで、♪ハローもグッバイも♪という詞にかけてビートルズ「Hello Goodby」の♪ドレミファソラシド〜♪を引用した、とネタばらしされてたのを先に読んでたのです。なので、現物聴いたときに、ああなるほどコレか! てなった、そのまま「ハローグッバイ」という曲もあるんですけどネくるりには。うふふ。本人の作品ぽいっていう度合いは一番だったかもしれない、咀嚼して咀嚼して、その結果は激しく元曲から離れた訳ではないんだけど、高野寛らしさはふんだんに感じられてるし、やさしさ、おだやかさ、芯の強さがすごくいいなあと。この元曲もイントロなんかはギターのジャキジャキしたストロークが要な訳で、そう思うとくるりってギターバンドだった時期が長いのだな、と高野ワンゲルのイントロのポップさに再認識。あと、元曲のヴォーカルはスタッカートというか、符を刻む感じがあったところで、高野さんはスラー? レガート? なんていうんだろう、なめらかに音を繋げて歌う符割りが目立っていて面白かったです、♪僕が息絶えたとき♪のところとか。虹同様、♪水溜りは希望を映している♪のとこの元曲のブレイク…というか、この後のフレーズでギターがギャーンと入ってくる感じを強調するために音数を減らしたりする元曲のポイントがうまく反映されているのもニヤってなった。こういう、表現自体は違うのに、オリジナルのダイナミクスを活かしてくアプローチって好きだわあ。はふん。
ワールズエンド・スーパーノヴァFantastic Plastic Machine
ぎゃーナニしてくれちゃってんのゲラゲラゲラ! という感じでした。ああ笑った。ご本人と岸田のコメント見てフーンと思ったんですが、あれなんですかね、今日びはこういうのが「踊れる」感じってことなんですかね、わたしだったら元曲のほうがよっぽど踊れるけど。全編通してコード感なくしてビートを無造作に強調しすぎてるところとか、展開部の扱いがしつこいところとか、どーもしっくり来ないところが多いんですが、中でも一番アレだったのは、イントロから♪ドゥルスタンタンスパンパン♪のサンプリングを連打するセンスがね…だって元曲のハイライトじゃないですか、しかも邦楽ロック史に残るレベルの。それをあんなにやっすい感じで連打て! しかもここ、直後の♪僕ビートマシン♪の「僕」を喰って繋がるから格好いいんであって、あんな風に解体して扱っても全然格好いいと思えないなーわたしは。唯一、いいなと思ったのはサビのコーラスを強調してるところか…でもなんかもう、全般的に生理に合わんちゅうことだけがはっきりした感じでいっそ清々しい気持ちになりました。ひとりだけ分数も長いしね、CD の収録分数の上限74分を16組で割ったらせいぜい4分半なのに7分て! まあ、長さを与えるなら田中さん、ちゅうのも分かるんですけども。ホント、突っ込みどころが多すぎて聴いてて疲れた、ははは。
飴色の部屋/MASS OF THE FERMENTING DREGS
佐藤くんのコメントでも触れてるけど、イントロのフィードバックからひどくよかった。わたしは元々フィードバックとかのノイズは苦手なタチなんですが、手癖でやってる感じじゃない、説得力のあるノイズで、ばすっと刺さってしまったなあ。こーいうバンドはいいなあと思う、強い。ギターソロもとてもきゅんとしたんだけど、このよさは言葉にしづらい類のものですね、気持ちに直接どがーんと届いてしまって脳を経由していないので。♪ああ、さよならいつか♪ のところのヴォーカルとかね、もう、すっごい胸がぎゅーって…ブレスの1つ1つまでに魂が入ってて、いいカヴァーだなあとじんとした。こういう曲が1曲入ってるだけでアルバム全体の価値が上がるよね、ってあれ、言いすぎですかね?? とにかく、おそろしいほどまっすぐな「バンド」という感じで、ライブ観たくなりました。これはくるり云々じゃなくてマスドレがすごいってことなのかな、バンドとしての強みのかたまりみたいなバンドだと思いました。岸田がどうしてあんなにマスドレを好きなのかもよくわかった気がします、くるりはバンドとしての強みを持てずに、それを補うことで前に進んで来たバンドのような気がするので。さぞやうらやましかろう。しょうがないわそれは。
青い空/9mm Parabellum Bullet
これは…FPM と別の意味で笑った、完コピ路線でスタートしておいて、1コーラス終わったところからの破綻が衝撃的で。こんなスラッシュメタル…いやグランジ? なんかわかんないけど、キシャーッ! ブドドド! パン! っつうバンドなんですかね元々? ヴォーカルの声がすごい色っぽくてそこもまた笑ってしまったというか、元曲との比較で全部倍くらいうまいよ! っていう微苦笑が楽しかったです。なんか音数多いかと思えば展開部の音の抜き方とか堂に入ってるし、3回出てくるサビのギターのリズムパターンが全部違ってて悪ふざけも甚だしいし、勢いと知性と両方ある感じで面白いなあと。最後の謎の3拍子のところ、最後の音階だけ上げてるズラし方もうまくて、なんというか、達者すぎて呆れた感じです。どこまで冗談か分かんない感じが気になる、聴いてて疲れるけど。ひひひ。
春風/松任谷由実
伴奏がくるり(って、伴奏って変か、何ていうのでしょう?)、しかもオリジナルの3人でドラムはもっくんが叩いている! なんて知る前に視聴したときはすっかり打ち込みだと思ってました。ドラムっていうか、パーカッション担当という感じ? ♪溶けてなくなった♪のフレーズの入りの符割りに、ユーミンの矜持が全部出てる気がして、ユーミンに苦手意識を持ってるわたしでもちょっとほうっ、ってなった。♪シロツメクサで編んだネックレスを♪の音程の抜き方とかねえ、さすがだなあって。元曲のフォーキーさがなくなってるわけでもないのに、微妙にシティポップっぽさも加わってて、全体的にさらさらってしてて不思議な感触。なんでしょうねこれ。最後に意図的にだるい感じにしたコーラスが入ってくるのがかなりよかったです。熟練という感じ。
ハイウェイ/LITTLE CREATURES
ひどい! ひどくて最高! どうせふざけるならこれくらいふざけるというのは正しいなあと思う。こういうのって何ていうの? ロカビリーでもないし…よくわかりませんが、がすっとコード感を削いだリニアなアレンジで♪何かでっかいことしてやろう♪らへんでいきなり和音がわーっと膨らむ感じもいい。間奏が意外とオリジナルを彷彿させる度合いが高くてそこも面白い。この曲って、曲じたいが強い…主張は強くないんだけど、詞の普遍性がすごいから、そこに乗っかって叙情的なアレンジにするほうが簡単だったんだろうと思うんだけど、そっち行かずにこういうほうにばーんと飛躍するっていうのは、笑っちゃうし、企みの強度がエロくて格好いいと思った。なんかね、恥じらいを知っている感じがするんですよね。世代的にも文化地域的にも、くるりより LITTLE CLEATURES のほうがわたしのバックボーンに近いので、こういうアプローチを選んでいること自体にニヤリとなってしまう感じ。いやあよかった、ホントよかった。
宿はなし/二階堂和美
もう、選曲とアーティストの組み合わせが発表になった段階で「いいに決まってる!」って感じだったんですが、思った通りによく、そのよさが100%だったがために、ボーナスポイントで150%にまでなった、という感じのものすごいよさでした。思った通りなのに、思ってたよりずっとよかった、なんておそろしいことだ。なんだか、今年は夏から秋にかけてこの曲を噛み締めることが多くて、改めていい曲だ…っていう認識は一度通っていたつもりだったんだけど、そういうのを遥かに超越して沁みてきたのでびっくりした。この曲は音博でも3年連続で最後にやっていて、「飛び石」とか「べんがら格子」とかってワードも出てくるので、京都・鴨川の歌だっていうことは事実なんだと思う。でも、ニカさんのコメントにもあるように、彼女が歌うと場所を限定しない風景が広がるなあと思って、そこがね、すごいなあって思ったのです。バイオリンがまたよくって、誰だか知りたくて初めて歌詞カードを見ました、ら赤犬のまるむしだったので、歌心のあるバイオリンを弾く人なんだなあ! と驚きました。2人だけで演奏してるっていうクレジットに意外な感じがしたんだけど、音数考えたら当然なわけで、じゃあ何にびっくりしたんだろうと思ったら、音の広がりの大きさだった。録音がうまいんだろうけど、奥行きが深く感じられる音なんですよね。広ーいところで鳴っている感じがまた、河原っぽいんだなあと。最後のせせらぎの音も、ベタっちゃベタだけど、それ以上に感じられた清らかが勝ってぐっと来ました。珠玉。
Old-fashioned/キセル
一番オリジナルに忠実な気がする、聴き比べた訳じゃないから印象ですが。でもそれは、この曲ができた当時のニュアンスを誰よりもよく知っているからこそ、そのニュアンスを大事にすることを選んでこうなった、ということのように聴こえて、要するに大変な愛情が感じられる。その中で、ギターの音をエレピの音に置き換えてることでかわいらしい感じが出ていたりだとか、ヴォーカルの声質の違いがまたかわいらしい感じにつながっていたりだとか、かわいい版! という感じ。キセルの丁寧さ、やさしさが出てるなあと思います。あと、これもやっぱりカヴァーを聴いたらオリジナルのギターギターしているところが浮かび上がった感じがあった。くるりって本当にギターに依存した度合いの高いバンドだったんだなあ、ってここでも再認識。
東京/世武裕子
すんごい、予想を大きく越えてよかったです。なんかこう、世武さんはくるりの2人の息が完全にかかっているから、「デビュー曲の発売日から11年目の同じ日に発売するトリビュートアルバム」という企画に身内を引き込んで、しかもそのデビュー曲を演奏させて、アルバムの最後に収録する、っていう扱いが裏目に出るのではと…傍目に「なんで?」「これ誰?」みたいな感じになっちゃったら、せっかく面白いミュージシャンなのに勿体ないなあと思ってたんですよね。だから、試聴も一番最初に世武さん聴いたんだけど、弾き語りだから30秒くらいぽんと切り取ってもわかんなくて。そもそもピアノ弾き語りって、割といい曲め、感動めに落ち着きやすい印象があって、勿論世武さんは変態だということはわかってるんだけど、そこがちゃんと弾き語りでいい感じに出るのか、今ひとつ想像がついてなかったんだけども。でもね、こうして通して聴いたら、それはもうもうばっちりで! 変態さも出てるし、泣けるし笑えるし、一方でちゃんと物語が浮かび上がって来てて、ワーイと本当に嬉しかった。世武さんのちゃんとした歌もの聴くの初めてなんですが、歌っても陳腐に聴こえない歌声なところがしみじみ嬉しかったし、とにかく全体通して和音感が素晴らしく、殊にサビんところの和音感なんて後光が射すようでグワーってなった。あと、わたし常々、元曲の2コーラス目のヴァースからサビにかかるところ、♪ついでにちょっと君にまた電話したくなった♪のあとのブレイクを挟んだ小節数がなんかおかしい、割り切れない感じがしてたんですが、世武さんがそこにスキャットを交えたフレージングを埋め込んで解決しているのを聴いて、ああ! って思った、やっぱり元曲は2小節多いんだ…! と。聴き慣れているからアレだけどよく考えたら謎な、元曲の♪パーパーパパパパー♪のコーラスが持つうねりも、ピアノのバッキングですごいうまく表現してると思ったし、なんかね、元曲にあるものはちゃんと全部大事にして、その上でオリジナリティがぶわーって溢れてくる感じがあって、胸に迫りました。♪君がいるかな君とうまく話せるかな、まあいいか、でもすごくつらくなるんだろうな♪のところ、転調で元曲の切実さも、愛情も、諦めも、未練も全部、真面目に真面目に、自分の中から出て来る音で、自分の感情として歌っているような誠実さがあって、それはそれはたまらなかったことです。なんかこう、年若い女性なのに、属性の持つ意味がまったく感じられない音楽になっていることが面白い、あんな風にほっぺたがぽんにゃりした、26歳のかわいい、小っちゃい女の子が、こんな歌を歌うということがもう愛しくてしょうがないですよわたし。心配してた部分ではむしろ、このトリビュートアルバム自体が世武さんのものすごい宣伝になっただろうという気が今はしていて、レーベル社長としての佐藤くんの博才を感じてしまった。引っかかる悔しさを感じつつも、次の世武さんのライブはがんばって時間作って行くよ…!と誓いを胸に抱いた次第でした。堪能したあ!

と、いう訳で、本当に充実したいいトリビュートアルバムでした。通して思うことはやっぱり、くるりは和音が面白いバンドだなあということ。楽器の編成が時期ごとに違っているけど、その編成ごとに面白い和音を鳴らしていて、なんか単純にギターが何のコードを押さえているか、とか、そういうの以上に響きが膨らんでるんですよね。だから、カヴァーする人の解釈によって和音の捉え方の幅が大きくて、そこがすごく楽しかった。
ベスト3を上げるなら…虹、東京、飴色の部屋、宿はなしが競る、かな。女性ヴォーカルが多いのはわたしの好みなのか、女性が解釈するくるりが面白いのか。いろいろ、ぐるぐる考える楽しさもあるトリビュートでした。クレジット見てみると、皆少人数で録音したトラックが多いのも面白かったです、名義に挙ってない人の音はあまり混ざっていないのに、結構な広がりがあるものが多くて、宅録要素は参加アーティストの大部分に共通してる印象が残った。
最初にこのアルバムのニュースが出たときは、シングル曲ばっかりのカヴァーでつまらんよ、って思ったんですよね。でも、こうやって聴くとシングル曲ってやっぱり強度があるから、カヴァーする人の色を乗せる余地が大きいってことなんだなって思った。マニアチョイスみたいなの期待するのは目的が違うと気づいた感じです。いい曲多いねくるり。そういう、さわやかな結論をもたらす企画盤でした。満腹。