いとうせいこう、「先見日記」でヨーロッパ企画に言及

役者たちのほぼ全編にわたる“半笑い”のせりふ術(真面目にせりふを発音せず、常に半分笑っているようにしゃべる)は「芝居の敷居を低くするための演出」なのだそうだ。確かにせりふらしく滑舌をよくしてしまえばいかにも演劇チックになる。

上田氏の狙いはあくまでも等身大の学生を描くこと、あるいは観ている客の普段のしゃべり方となるべく差のない語りであって、それがつまり結果として“半笑い”になるのは時代をよく象徴していると思う。真剣な口調でのコミュニケーションは、現代ではそうそう行われていないという事実がそこにはある。

やた、ビンゴ! 今年の1月、わたしはこんなことを書いてた。

ヨーロッパ企画の舞台を観た人の中には、役者の演技があまりにも自然なので、「素」で芝居をしているような感じを受ける人もいると思う。素人臭い、とか、惜しい、とか、学生ノリであんまりちゃんとしてない、とか、たまにネットでもそういう感想を見かけますし、彼らが同志社の演劇サークルからスピンアウトする形で独立した劇団で、メンバーはまだ大半が20代半ばであることなどを知ると余計、こういう風に書いてた人は「ああ、やっぱり」とか思うんじゃないかと思う。

でも、これは大いなる錯覚だとわたしは思っていて、その「自然さ」「惜しさ」「素人臭さ」は上田さんの狡猾な演出に拠るものだと確信してるのですね。弱冠26〜7歳にして、役者にここまで徹底した演出を施すというのが、そのホンの独自性以上に、ヨーロッパ企画…っていうか、上田誠の特徴であり魅力でもあるんだと思う。

せいこうさんは、上のエントリでわたしがベタベタ触れた「静かな演劇」以前の宮沢さんの舞台*1に出ていた人なので、わたしの中ではものすごくすっきり、つじつま合う感じだな。にやける。ひろこさん*2、教えてくださってありがとうでした!