シアターテレビジョン10周年企画 12月「舞台人の選ぶ My ベスト10」

毎度毎度お世話になっているRyさんち*1でシアテレの10周年企画「舞台人の選ぶ My ベスト10」の結果を読む。
http://www.theatertv.co.jp/10th/
いやあ、面白いわあ。わたしはいわゆる「演劇」とは縁のないまま大人になったニンゲンで、若い頃はむしろ、舞台表現を毛嫌いする傾向*2すらあった。今、普通に舞台いっぱい観てるみたいな感じに思われてるかもしれないけど、実際んところはもう全然で、両親は芝居好きだったので、「タンゴ・冬の終わりに」の初演に連れて行かれたりとかしてたけど、全然覚えていないもの、真面目に観てなかったからね。
でも、23歳で宮沢章夫さんの遊園地再生事業団「知覚の庭」を観て、初めて「世の中にはどうやら、面白い『演劇』もあるのだな?」と思った。他にも面白いものがあるのなら観てみたいなあ、と思って、宮沢さんが一緒に仕事をしてた人がつくる「演劇」ならきっと大丈夫なんだろう、と、大人計画シティボーイズを観た。そしたら、どっちもものすごおおく面白かった。
その後、平田オリザ岩松了も観てみたら、やっぱり両方とも面白かったけど、平田オリザは思想的な部分がちょっと強かったことと、舞台表現以外の活動までを追うのが大変すぎて、自然に観なくなっていって、もう1つ気になっていたナイロンは、何故か微妙に距離を置いたまま、じろじろ外から眺めて過ごした。そんな風にその系譜のもの以外は観たいとも思わずに、ずうっと長いことを経た。
…つまりこの「10年」というのはわたしにとってそんな感じだったので、ここで舞台人の方々の挙げてらっしゃる作品の大半は観ていないという、その事実には何ら疑問を感じないのだけど、その中でケラさんが選んでいる10本中、実際に劇場で観たものが4本、映像で観たものが1本混じっているというこの事実にちょっと度肝を抜かれた。何だこの高打率。普通に考えてありえないし、1位にヘビナ!*3を持ってくるチョイスとか普通じゃないし。知らないでしょこんなの、皆*4
率直に言えば、ナイロンの舞台を実際に観たのは「消失」が初めてだった。それくらい、ケラさんに直接は触れてこなかったわたしなのに、関心の在り処は同じあたりにぐるぐると留まっていたのだなあと思うにつけ、ただ単に、きっかけがなかっただけだったのだと思い知らされる。多分、心理的にものすごく近いところに、ずっとケラさんはいたんだなあ。
あと、社会人として働いた年数分、松尾さんや宮沢さんの作品を通して世界を観る、という体験を重ねて来ているので、そのことが今のわたしの価値観にものっそい大きな影響を及ぼしているのだなと…まあ、普段から自覚があるのだけど、このケラさんのラインナップを見たら、更に強烈にそれを思い出してしまった。わたしの大事な経験と記憶、内側に蓄積されている色んな気持ち。そんなあれやこれやを。
っていうか、10年ですよ? 10年続けてることって何かある? わたしは10年、自分のお金と時間で宮沢さんや松尾さんたちの作品を観続けて、彼らの周辺の人たちのスタイルを面白いなあ、格好いいなあと思い続けて来たよ。そんな風に、わたしが面白いなあと思っていたものと同じようなものを面白いと思って来たっていうケラさんが、今、全然現役でバリバリ舞台を作ってくれているというのは、わたしにとって幸福なことだと思っていいんじゃないのかなあと思った。
あと、その流れでいけば、八嶋さんは惜しいところをかすって、わたしがギリギリ観なかった作品ばかりを挙げているのが面白れえなあと思った。後から観るようになった劇団の、「それはまだ観てない」っていうのばっかり。あと、ウーマンリブも、轟天は「あ、これはいいや」って思って観てなかった、前年の、ケラさんが選んだ「熊沢パンキース03」は血湧き肉踊ったとゆーのにだ。やっぱり何か、系統があるのだな、きっと。

*1:id:rysheep

*2:母が日舞の先生&舞踊家のはしくれ、というのが影響してた気がする。無理に日舞をやらされて、年に一回の発表会の舞台裏の喧騒でもみくちゃにされて、へとへとになった幼少のわたしは、こんな大変な思いをしてまで舞台に出たいとかって、どういう神経なのかな、と「舞台に立つ人」のマインドに不信感を抱え込んだ。あと、芸術系の大学に通っていたので、そんなに面白くない素人芝居を観る機会に恵まれまくっていた、というのもある。

*3:中村有志さんとビシバシステムが、かつて宮沢章夫さん率いるラジカル・ガジベリビンバ・システムが公演を打っていたのと同じ原宿・ラフォーレミュージアムでやったオムニバスコント舞台。キーワードは「巨大芸者」。関係ないけど第2回公演の折、シティボーイズの御三方が揃って来場しているのを客席で見かけた。大竹さんが「さあ、プロの舞台を見せてもらおうか!」とわざと大声で言いながらのっしのっしと歩いていて、有志さんたちと仲良しなんだなあと微笑ましく思った。

*4:でも映像が残っているというのがすごい。可能な方は是非ご覧になってみていただきたいなあ、勿論、当時はべらぼうに面白かったけど、今観たらどうなの、という点については、わたしも観てみないと何とも言えないのだけど。