「嫁とロック」グループ魂

嫁とロック

嫁とロック

聴いた。感想長いぜ、こっちも畳んどくぜ。
うーん…ごめん、正直今イチ。ちょい惜しい。何でかっていうと、音源トラックとコントトラックで見たとき、コントがあまりにも弱すぎると感じたので。「大江戸〜」は前作を越えていないし、「石鹸がいっぱい」は七恋・三宅マンを越えていないように聴こえた。「夏の思い出」は、終わらないバイト君の悪夢…みたいな悪趣味なところは結構好みだったけども、それにしても、カヲルさんのキャラクターもバイト君のキャラクターも、新機軸を打ち出してもいなければ、あまりにも怖かったり気持ち悪かったりして笑っちゃう、ということでもなかったし。なんかねえ、全般的にコントトラックのキャラクターが弱いんだよねええええ。既存キャラであれば、エスカレートしてないと笑えなくなるじゃないですか。でも、バンドメンバーのキャラを底上げしてゆくと、結局は自分たちの首を絞めることになるし、できればメンバー以外のキャラ(名前とかなくても、「さくら」の通行人おばちゃんとか、ああいうのもあり)で、ファンじゃない、前提知識のない人にも届くような笑いにしてほしかった感じもあり、そのへんが物足りなかったというか…端的に言って「今イチ笑えん」と感じてしまったのだな。うーぬ。
一方、音源トラックは、メインの2曲を別にして見たら、「NO YOUNG, TOO YOUNG」がよかった、身も蓋もなくて。いえ、これを身も蓋もないと感じるのは、単純にわたしが作詞者と同世代だからなのかもしれないけど、少なくともこんなことを歌う人たちはほかには知らないので、魂らしくていいなあと。まだ若い、「血気盛ん」の例が「蚊に刺されたの俺だけ」だなんて、なんて物悲しい…。楽曲的にもすがすがしいバカロックで、例えば暴動さんのコーラス…コーラスっていうか、イントロの…コーラス? がよかった、ダミ声がなんか、すっごいばかっぽくて。この人多分、ライブではまず歌い切れないんだろうなあコレ…と思うにつけ、何故にライブでの再現が過酷なフレーズばっかり自分に振るのか、そのMっ気に苦笑せざるを得ない。あと、破壊さんのヴォーカルの、アタックの強い感じ、ビートの利いた歌メロがハマる感じがすごく活きてていいなあと実感。この人はホント、符点のついたハネる譜割りとか、拍を喰うフレーズとかがうまいのな。なんか、この声が嗄れてしまったことがあった*1なんて、今になれば信じられないことである。
「東京メドレー」は意外なほど好みだったので自分でも意外だった(…あれ? 1曲未満のアイデアの断片を並べた、みたいな解説を暴動さんがしていたけども、そういう、完成させようとしてない投げっぱなしの無茶な感じがものすごくよかったのだ。「無職」の楽曲と歌詞に漂う理不尽さったらないぜ。ダサい楽曲にひどい歌詞、闇雲な卑屈さが愛しいことこの上ない。「日本人」も石鹸ネタとしては「石鹸がいっぱい」より完成度が高い。「ウザい石鹸」という具体的なキャラクターを本人に演じさせてしまっている*2「石鹸がいっぱい」の説明過多に対して、断片的に断定的に、「石鹸ぽさ」のフレージングを乱暴に積み重ねてゆくところに魂らしいタフさを見るね、わたしは。これだったら、「石鹸のテーマ」と被ってても飽きた感じがしない。あと、この曲に入ってくるところのギターの感じがあれだ、ZAZEN の「自問自答」イントロに似て蝶。「ガンバレ」は「夏の思い出」よりバイト君のキャラが前面に出ていて、薄気味悪さが心地よいじゃないか。あと、「東京18年」にはまんまとびっくりしたとも、こういうでたらめな歌だと思っていなかったので。何だというのか、この梅雀しばり。東京関係ないじゃん、っていうね…この不可解さ、こういうのが好きなのよう…歌い出しの力強いカヲルさんもいいし、歌い終わりの、ぐだぐだな音階を力技で合わせて締めるカヲルさんもいい。カヲルさんが、少なくとも「港カヲル」というキャラクターにおいては、きちんとたくましくあることが感じられて好ましい。あと、何つーかオサレポップスよねい、一瞬ピチかと…歌ってる内容はホントでたらめなんだけども。カヲルさん笑っちゃってるし、ゴボウの前んとことか。
というか、とにかくこの1枚を通してわたしは、破壊さんのカメレオンぷりにノックアウトされた感がある。毎々のことであれ、それが突出して感じられるということは、ネタそのものが弱かったということなんだろうけども…今回はホント、出色、という感じ。「NO YOUNG, TOO YOUNG」の後半の♪ポールヤング、二ールヤング♪のところの気持ち悪さとか、「嫁とロック」のAメロのファルセットに裏返るところの気持ちよさとか、「東京18年」の…そうこのファルセットな! なんだアレ。最初女性コーラス入れてんのかと思った…ボーナストラックもとんでもない。すごいよなあホントに。何なんだろうこの人…怖いなあ…。
破壊さんを手足として、暴動さんを頭脳と見るのであれば、ちょっと脳みそ疲れ気味のところを、手足の熟練が助けている感じに思えなくもない。つーかそもそも、既存客を笑わせるためのネタなのかな、今回のは。新しいネタが薄いし、内輪受けギリギリに思えたんだけども。既存ファンを喜ばせるための予定調和とか、そういうのじゃ満足できない身体にしたのはアナタのほうじゃない、責任取ってよ…! みたいに、のの字描いちゃう気分なのよねい。うーん。
…あ、ちなみにこれらは「わたしがどう思ったか」の感想でしかないので、コメントとかメールで「そうじゃないと思います」みたいなリアクションをいただいても大真面目に困るのでご勘弁願いたい、と一応注釈をば。わたしがお金を出して買った CD を、わたしが聴いて、わたしが感じた感想を、わたしの場所で書いている、というだけなので、この感想を矯正しようとか思っていただいてしまうと、こちらとしては非常に困惑するのだ。これでも34年生きているし、初めて(役者としての、だけど)宮藤阿部皆川村杉を観てからもう11年になる。ブロスで比較してクサされていた、オリジネータとしてのスネークマンショーも、小中学生のときにリアルタイムで聴いていた。それなりに背景あっての感想なので、なんか食い違いを覚えても、世の中にはいろんな見方をする人がいるのだなあ、このばかもののように、と、引いた感じで、生暖かく見ていただけるようお願いしたいと思う。
そもそも、わたしが褒めなきゃダメ作品、ってことはないですし。「でもわたしはこの作品が好きだ」「最高だと思う」と思われる方がいらしたら、わたしとの感じ方のずれを確かめていただいて、「ああ、この人はこのよさが分からない可哀想な人なんだなあ」とでも思っていただけたらと思う。わたしは、わたしの思ったことの範囲内で、嘘のない気持ちを真面目にここに書いているつもりだ。それはあくまでも、読む方の感想とイーブンってことなので、言い負かそうとしないでも大丈夫です。ええ。
…で、注釈終えて、感想の続きなんだけども、ここまで「イマイチ」といいつつ、最後の最後にボーナストラックはすごーくよかった。おかあさーん、キチガイがここにいるよ…!! っつーか、この「だ、誰…?」という困惑*3 *4、多分これなのだ、わたしが魂に求めてるものって。うう、愛しい…こんな意味不明の、キチガイっぽいのにリアリティのあるキャラクターを書くのは宮藤さんにしかできないし、それをこんなテンションで演じ切るのは阿部さんしかできないし。何より、自分のやってることに全部ツッコミ入れなきゃ気がすまない宮藤さんの頭のおかしい感じがホントいい。分裂症ギリギリみたいな感じ。うう、素晴らしい、♪埼京線の冷房車両で見かけた〜♪「寒いやろ、12月やぞ!」♪夏はまだ続くけど♪「冬じゃボケ!」…ああ、だいすき、このトラックたまらん…ラブだラブ(…狂った。
いえ、色々書いてますが、要は、この CD、聴き返し回数少なそうだなーと思った、ということに過ぎません。そもそも、全部のアルバムの全部のトラックが好みだった訳ではもともとないし、ミニアルバムゆえの分母の少なさで、好みの確率が低かっただけ、と捉えることもできる。ただ、なんか、時間ない中で作ったせいで、既存ネタの続編的な感じが多くなって、密度が薄くなったんだったら、無理に作ってもらったりしたい訳じゃねえんだよな、と思ったりもしたけど、半面、時間の問題じゃない気もするしねえ。たまたま? なんかよく分からないんだけども。
音源楽しみ、ライブ観たいと、ばかのひとつ覚えで唸り続けるクレクレ厨=ファン、ではあるのだけど、一寸のうんこファンにも五分の魂、無理はしてほしくないなあと切実に思う、暴の人には。言うてもメージャーレーベルに所属している訳だから、レーベル側の意向とか色々あるのかもしらんけど、彼が面白いと思えるものを、楽しめる余裕のある状態で作ってほしいなあと思う。…なんつってな、割とすぐに分かったようなことを書きたがるわたしだけども、そんな憶測してもキューン側からの制約は何もないのかもしれないし、誰がどうすると「無理」をすることになるのかは分からんのですけどね。要はテケトウにそれっぽいことを書いているだけだ。ああそうだ、知ったことかい(…狂った。
彼が以前に口走っていた、「魂をやるのがストレス発散」「魂を長期間やらないとストレスが溜まる」という言葉を愚直に信じるのであれば、当たり外れの振り幅を覚悟しつつ、差し出されるものを「なるほどなるほど」と受け取っていればいいのかもしれないと思うし、反面で、「TMC」の完成度とかを思うと、もっとできる子なの、母さん知ってるの! みたいな錯乱もなくはなく。いずれにせよ、ファンとは何とも面倒なもんですな…と己が業の深さを噛み締めておる、という話。うん、面白くもなんともないね…すみません。
ま、いわば中年の部活動、続けてくれればいい、という前提であれば、たまにはこういう不発もありつつ、ゆるゆるやっていってくれればよいのでありましょう。ライブ前提としてないミニアルバムとしては、コントの不作が目に余った感こそあれども、音源トラックは概ね好感触、ホント、キチガイキチガイ、という安心感もあるにはあった訳だから。毎試合ホームラン(俺的)を期待すんならお前が作れ、という話であって、魂については、見守ることに意味を見出しつつあるので、これはこれでよいのだろうと思うよ、きっと。でも、物足らなかったぜ、率直なところ。でもそれはシモネタがなかったからじゃないぜ。そんな感じです。
あーあと、なんか、あんま「音源出せ」「ライブやれ」というのはやめたいと思った。大人なんだし。転びたてで、ライブやってくんなきゃ飽きちゃう、っていうのとも何か、マインドが違ってきてるし。わたしは小出しにされて薄まったの呑まされるよりは、うんと濃ゆい、どろーっとしたやつ、カルピスの原液みたいなやつを、3年にいっぺんくらいぐいぐい呑まされるほうが、らしくて相当気持ちがよいんじゃないかと思った。実際、来月急にツアー、とか言われても、こっちも大人なので対応できませんし。有給とか、たんす貯金とかが復活してから大規模なことしてほしいし、向こうには向こうの、「満を持して」まで、適当な感じの活動をちょこちょこする期間が定期的にあればそれでいいようにも思う。
何しろあの人たち、ライブの調子が戻るのにちょっと回数要るんだよね…今年やっと夏フェスでそれを理解したので、単発で不完全燃焼なライブを観るのも善し悪しっていうか…や、やったら観に行くんだけどもさ。ま、ツアーの日程確保できる年までは、ほどほどな感じでやっていっていただきたいと思った。このへん、ホント人によって感覚違うんでしょうけど、わたしの場合は魂だけが死ぬほど好きって訳でもなく、中の人の活動も好きなので、ホントほどほどな感じでも別にいいよ。他にもライブが楽しいバンドはいっぱいあるしね。長く、楽しめる感じで、細々とでも続けてくれればそれで構わん。こっちはもとより、いけるところまでは着いてゆく気でいる訳だし。
そんな訳で、明日は NODA MAP に行って来る。四角い顔のテンパリ親父を存分に楽しんでくる所存である。

*1:最近思い出すことがあるのだ、1年前のことを。多分「大人計画 その全軌跡 1988−2006」の中の山賊ツアーの記述で、宮藤さんが「ツアー1発目の九州やって、阿部くんの声が潰れたら、残りは自分が歌うつもりだった」「それに納得できない人のための払い戻しのお金やお詫びの文章も用意してツアーに臨んだ」みたいに語っているのを改めて読んでうわーと思ったからだけど。

*2:ふと思ったのだけど、これを別人が演じていたらちょっと面白かったかも。大人フェス・細川徹「私の人生」のように。あれ面白かったもんなあ、誰の人生にせよ、三宅さんがばかを演じるというリフレインが…。

*3:勿論あの…じん兄さんであることは理解してます。いや、…じんの偽者、という感じか。

*4:後日後記:思い出した。たか…が、去年の紅白出場者を斬る、みたいな番組かなんかで君ジュにいちいちつっこんでいた、っていう話ありましたよね、あれだったかーーーーー、あーー。