ZAZEN BOYS "TOUR MATSURI SESSION"/ CLUB CITTA'

11/30 の AX ぶり。セトリが殆ど変わらないのに、ものすごく印象が違った。っていうかまず、チッタってこんなにちっちゃかったっけ?! と衝撃を受けた。わたしが学生の頃、ああいう感じのオールスタンディングのハコって結構限られてたんだよね…AX も、多分 ZEPP もまだなくて、クアトロかチッタか、という感じだった。クアトロに比べて大きいような気がしていたんだけど…今になって見ると AX とか ZEPP とかに慣れた目で見るとちっちゃいのな! ぽかーんとしてしまったよ。その上、結構空間に余裕がある状態で観られて、ダイブする人もいなくて、川崎は渋谷と全然違うよ…! と思った。
演奏は、AX でビートが重い、テンポが遅め、と思っていた曲のうち、何曲かはもうちょっとテンポを上げて、かなりぎりぎりに重め、という気持ちよい速度に落ち着いていて、かと思えば、AX と比べてもより一層ひどく遅ーく、重ーくなっていて、えー? っていうくらい、客の勢いを逸らそうとしているとしか思えないくらいの曲も。前者は「SHIGEKI」とか「安眠棒」とか「SEKARASHIKA」で感じたし、後者は断然「DAIGAKUSEI」な! あれなんだろう、ホント謎。あの、ビートがぶつん、ぶつん、べたん、ばたん、とぶち切れるみたいな。もう、なんかあんまりにも遅くて、重くて、頭は面白がっているんだけど、身体は完全にノッキングしてしまった。どうなんだこれは? 面白かったんだけどね…。
っていうか、もう全体的に、バンドのグルーブががっつり噛み合ってる感じが渋谷の比ではなくって、なかんずくひなっちのベースのうねりの気持ちよさは凄まじく、わたしはきのうの川崎であのベースに完璧に恋をしてしまったのだ。1曲目、「WHISKY&UNUBORE」の後半の刻みで完全にノックアウト。ベースを弾くほうの右手じゃなくて、フレットを押さえているほうの左手を拍に合わせて前に突き出して客を煽る姿が、背骨の首の付け根んところを支点にして拍の裏を取りながら身体を揺らすビート感が、豆か餅のようにピックを撒きまくるさまが、向井ちゃんが奇怪な踊りを踊ったりおかしな合いの手を入れたりする度に見せる、くるくるした目でにかーっと笑う笑顔が。もーいちいちたまんなかったなあああ。
向井ちゃんが出てきたとき、会場が笑いの渦に包まれたのだけども、それはなんでかっつったら、頭がオールバックだったから。被っていた帽子を脱いだばかり、みたいな、長さが足りないがために無理やり撫で付けた頭で出て来て、客も皆くすくす笑っちゃう感じで、でもその頭が、ライブが進むに連れて前髪が自然に下りてきてしまっていたのににやけた。しかもなんか、ステージ上で笑ってたのよあの人…! いや、気のせい…? ちょっと自信がないけども、笑って見えるくらい、雰囲気が穏やかで、動物みたいな声で叫んでも、噛み付くようなフレーズを弾き切っても、殺伐としたところは感じられずに、やたらとリラックスムードの感じられるライブだったのだ。
カシオは、AX のときにどうしちゃったの…? となったぱっつん前髪が随分伸びて、それにしても揃ってるのが面白かったんだけど、相変わらずぐにぐにしながらひどく沁みる音を鳴らしまくっていて、やっぱり妙に可愛げがあるのだ。よく笑ってたなあ、向井ちゃん見て。楽しそうだった。「RIFF MAN」のときに、歌う、というか、何か口を動かしていて、向井さんが口にしているフレーズを一緒に口にしているのか、何か個人的な合いの手なのか、距離があったから分からなかったけど、勢いを感じさせて格好よかった。松下さんも、ブレイクのところでわざとスネア軽くストロークしてみたり、最後にひなっちを後ろから抱えて抱き上げたり、茶目っ気全開。ひたすら、音と、ステージ上にいる時間とが、楽しくてたまらない、みたいな感じの男どもが汗みどろで顔をしかめて、音を鳴らしまくって、突如ふっと笑ったりとかしてて、実によい光景だらけだった。
でも、別に緩んだ空気だったってことではなくて、音はがりがりに緊張感があって、ツアーが進んで円熟してる感じがすごくしたのだ。「MABOROSHI IN MY BLOOD」から「IKASAMA LOVE」の流れとかたまらなかった、向井ダンスも含めて。「COLD BEAT」の松下さんの刻み、格好よかったなあ。新曲の「1989」のひなっちのベースは、すごい焦燥感を煽るというか、いたたまれないような切実な気持ちにさせる感じがあって好きだ。そのへんも含めてナンバガっぽいって言われるのかしら。「イレイザーヘッド」は、2回目に改めて聴いたら確かにナンバガテイストが相当強い。まあ、詞がな…「記憶を消して消去して」だからな…。エイトビートだっていうのも大きいかも。テンポも早くて、非常に気持ちがよかった。
アンコールで「半透明少女関係」のイントロが鳴った瞬間、それまでのライブを通して、なんとなく落ち着いていたフロア中の客の立ち位置の配置ががーっと前にずれた。前進守備というか。反射的に、みんな前に一歩出た感じ。前のほうに飛び出していった半袖Tシャツの女の子もいたよ。そういう、引っ張る力の強い特別な曲なのだなあ。アンコール最後の「WATER FRONT」は、AX のときは JUNO を客席に向かって横向きに設置したまま最後まで演奏を終えていたんだけど、今回はアンコールのタイミングで正面向けに配置を換えていて、イントロで弾きまくる向井さんの姿に、鎖骨のところがぎゅーっと痛くなった。
なんかねえ、ステージ上の向井さんは、帽子も被ってないしTシャツでもないしジャケットも着てないし、そうか、あれはアコエレスタイルだったのだなあ、と、半袖の黒い襟付きシャツ1枚の姿に納得を覚えたりした。ZAZEN のほうが、身に付けているもの…向井さん単体で見たときの「そうび」が身軽に思えたというか。あと気付いたのは、この人はバンドで、コーラス用のマイクスタンドを他のメンバーに立てないのですね。歌メロで和音にしない。でも、曲自体、すごく気持ちよく和音が鳴って聴こえているんだよねえ。独特のコード感覚というか、鳴ってない音が聴こえる感じ。それに加えて、あの強烈なビートの感覚な。無二ですねえ。うーん、格好よかった。
30日、CDJ でも観られる予定なので、今年の向井納めをしますよ。ええ。