拝啓、父上様

竜さん…(号泣。
うううん、いいなあ、梅宮辰夫。一平が大おかみの居場所を頑として言おうとしない、その心情を思いやりながら噛んで含むように周囲の人間の心情を言い聞かせ、無理矢理じゃなく訊き出すやり口も、自分ひとりで大おかみを迎えにゆく頑固さも。このヒトって大おかみのことがちょっとずっと好きだったんデショ…とわたしは勝手に観ているのだけど、そう思って見ると何かもう、「おみかん食べかけ」のくだりとか、「ゆきの」から坂下に帰ってゆくときの革ジャンとか、フランス料理が、とか撮ってつけたように言い出す一平を叱るときの言葉とかが、どれもいちいち沁みるったらない。ううう、さすがだぜ、倉本聰
コメディっぽいところはまあさておき、それぞれがそれぞれの事情と思いとで困りながらも暮らしていっているさまが、街並みの描き方の鮮やかさと相まって、すごく愛しく思えるドラマなんである。多分世の中の中高年女性は皆、自分のアレコレを棚に上げて、雪乃ちゃんと一平の関係に憧れることでありましょう。竜さんに見透かされたとき、一平が最初に口にした「雪乃ちゃんを責めないでやってください」っていう言葉には、母へのいたわりというより、ヒトとして雪乃ちゃんの正義を守りたいという意思みたいなのが感じられて、ああ、よいなあ、と溜息が出た。
一平は平凡で垢抜けなくて面白みのない子だけど、雪乃ちゃんの息子である、という点において、大おかみにイザというときに頼られる(つっても使いっぱばかりだけど)だけの「分かってる感じ」は兼ね備えているんだよね。その「分かってる感じ」は、ドラマの主人公に無根拠に搭載されていることが多いけど、一平の場合は、雪乃ちゃんのキャラクター、強さと弱さ、彼女が決して語ろうとしない父親の存在、やなんかによって、色んなことを「分かってる」のに、屈折らしき屈折もしていない、妙な健やかさとしなやかさに説得力が出ていると思う。大人の中で、それなりのやり方で、自力で立っていられる感じ。そういう一平のキャラクターを、二/宮きゅんはとても丁寧に演じてるように思う。やあ、いいっスなーニ/ノ。
また高島礼子がいいんだわあ、明るくて賢くて綺麗で寂しくて、何かしら大事なものを守っていて、そのせいで色んなものを放り出したことがあるような、そんな陰も感じさせているなあと。横/山くんの時夫が雪乃ちゃんにメロメロなのもよく分かる。鼻の利く子なんですね、あの子。坂下のヒトたちも皆、必然や事情を抱えながらも店を守ろうと一生懸命なところがぐっと来る。来週以降、岸本加世子が悪者にならないといいなあ。