ユメ十夜

観て来た。
なんか、ショートムービーが苦手なんだなあ、わたしは…と思った。あと、ユメが題材なのでな、脳みそが疲れるっていうか、フィクションとして見るのに努力が必要な感じがあって、その努力が悪いってことではないのだが、10回繰り返すとなんかさすがに疲れるというか。その作品のトーンに慣れた頃には終わっちゃうしねえ。うーん。
好みとしては、第一夜が好きだった。映像が美しくて、キョンキョンがエロくて。つーかキョンキョン、普通に立ち振る舞っているときの芝居(特に声)はなんかイラっとなるのに、横たわって旦那に、のろいのような最後の言葉をかけているところの口調ったらなく、初めて「女優・小泉今日子」を「いい」と思ったことであったよ。松尾ちゃんも、普段求められているのであろう反則技の芝居を一切せず、ひたむきなうろたえっぷりがラブかったス。
第六夜は前評判どおり、イメージ映像っぽい作品が続く中で珍しく音と動きとがくっきりと出た、笑いの要素のある作品で、メリハリとして素晴らしかったと思う。2ちゃん用語を使う必然性の有無は意見が分かれそうではあるけれども…わたしはそこは「ん?」と思ったが、まあ、阿部ヲタ(軽症)としては「阿部さんが2ちゃん用語…プクク」みたいな楽しみ方はできたのでよしとする。TOZAWA さんのダンスは面白かったです、撮り方も、バンバンクレーン使ってて臨場感あってよかった気がする。普通にこなれていたので違和感がなかったというか、舞台の人が撮った映像、みたいな感じでは観てなかったな。うん、格好よかった。
あと、松尾さんは何だかんだ言って、やっぱり阿部サダヲマスターだと思った。松尾さんが撮った阿部さんは、阿部さんのよさが前面に出ててたまらんものがありました。声も動きも顔つきもいい、美しく、そして愛嬌が。あの人はちょっと間違うと気持ちが悪かったり怖かったり、逆の方向に間違うと過剰に可愛かったりする人だと思うんだけど、実によいバランスで映っていて、今日びの阿部ファンの人は松尾ちゃんへの敬意を忘れちゃならんよ…? って改めて思ったなあ。あんな阿部さん撮れないぜえ、ふつう。
まあ、さらに舞台では阿部さんの偏ったよさを引っ張り出すのが松尾ちゃんな訳で、そのへんのバランスが不思議に面白いなあと思うのですが…っていうか、松尾さんは、映像のほうが過剰さをポップさに転嫁してる感じがして面白い。割と綺麗に出来上がるんだな、松尾さんの映像作品は。舞台のほうが混沌を残す意思みたいなものが感じられる。映像作品は、でこぼこがあっても、そのでこぼこが美しく整っていて目に美しく感じます。この感触の違いがちょっと興味深い。
あと、第五夜が自分でも意外な感じで好きだった。市川美日子ちゃんがよかったんだ、なんか。大倉くんも好ましい感じで。第九夜も、とにかく緒川たまきちゃんが綺麗でよかった。あの人は女性が好む美しさの人だから、女流監督に撮られるのって結構ハマるのかもしれないなあ。また、西川さんの撮り方て、女優さんの持つ空気の湿り気みたいなのをすごく上手く撮る印象があるのでね。納得のよさ。ほんで意外と、第十夜がかなり好きだった。やっぱりメリハリあると突出して、観てるほうは楽しくなる感じがあるよねえ。松山ケンイチくんはエロくて大変に宜しいと思う。エロいけど温度低い感じな。ほんじょさんが可愛くて、だからその後の豹変がいやーん、という感じになってよかった。
…と、印象としてはやっぱり、役者の印象のほうが強く残ってるっていうのがわたしには珍しいかもしれない。ちょっと色々特殊な映画でしたね。頭とお尻に付足してあった映像は、もうちょっと頑張ってもよかった気がする。オムニバス全体を繋ぐ唯一のかすがいな訳だからさ…すごいやっつけ感満載に感じられて、そういう意味では、個々の作品に対する各監督の気配りと、まとめる側のスタンスがちぐはぐだったかもしれない。全体に乗り切れなかったのもそういうことかもな。
取り敢えず、これからご覧になる予定の方はトークイベントのスケジュールを確認されるのも宜しかろうと思う。
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