情熱大陸

週末におぐりくんの「情熱大陸」の後半戦を見た。面白かったんだけど、その面白さはおぐりくん個人がどうの、っていうより、ものすごく勢いづいてる人、っていうのを久しぶりにがっつり見たせいだった気が。売れてく人特有のオーラのようなものがブラウン管越しに滲み出ていて、すごいなあ、といちいち感心しながら見てしまった。
おぐりくんは、売れる人の必須条件(実力とか姿勢とか華とか覚悟とか強さとか周囲からの信頼とか?)をひと揃え持っているように見える。でも、そういうの全部持ってるからって必ず売れるものでもなくて、タイミングとかめぐり合わせみたいなものってあるんだろうなーとも。勿論、事務所の地道な営業活動とか本人の徳や能の積み重ねとか電通の暗躍とか、本当は背景がちゃんとあるんだろうけど、メディアのこっち側で見てる分には「いきなり風が吹いた」みたいに見えるから不思議。
風に乗っかってる人は強い。実際、嗜好的には特に惹かれる箇所がないわたしでも、今のおぐりくんを見たら「人気出るの分かるわあ…」というオカン的な気持ちになった。勢いが、彼が何をしても魅力的に見せている感じ。怖いものなしだなあと思う。
でも同時に、こりゃあきっと、昔から彼のファンだった女の子のうちの何割かは、そろそろ彼から気持ちを離してしまうね…とも思った。怖いものなしの状態にある男の子の魅力は圧倒的だけど、そうなれないで葛藤している男の子のことを愛して、見守っていたような女子は、彼を高いところに連れてゆく風の勢いに退いてしまうことも多いから。「こうなったら別にわたしが見ていなくても…」という一見謎めいた理論で、ファンとしての一線を退く子がぽろぽろ出てくるタイミングだなーと直感した。あ、もうとっくなのかな、わかんないけど。
こういう「女子ファン」の心理について思いをめぐらすとき、いつも思うんだけど、分かりやすい意味で「売れる」とファンの裾野が広がって、それまでのムードが変わってしまうことって多いのよね。今までその人の「よさ」として大事にされていた部分(ファンの間で)を雑に扱う新参ファンとか出てきて、古参ファンの不興を買う、って構図はネット上でめちゃくちゃよく見かける。具体的には、ミクシのメインコミュでスキスキカッコイイって書くだけのトピ立てちゃったり、ノリノリでブログ立ち上げて自分がファンになる前の仕事にまで過剰に言及したり…古参ファンは、なんか大事にしてた場所にずかずか上がりこまれたような気持ちになって、自分から離れていっちゃうんだろう。そういうのをリアルに想像して、なんか胸を痛くなった。
や、別におぐりくんのファンだったことは一瞬もないんですがネ。でも、対象は違えど、こういう問題は誰の女子ファンにおいても表出しがちなものなんで、ものすごく身に覚えが(新参の立場も古参の立場も)あるとも言える。だから想像でちょっと生々しく凹んでおった。あの勢いはある種の罪だなあとか、そういう気持ちになったりね。
でも、彼が舞台やらドラマやらでどれだけいい芝居をしようとも、女子がキャーと言わなきゃ「売れた」って認識されない世の中だから。力のある人はいずれ直面しなきゃいけない問題なのかもだけど、拗ねぎみに退いてゆくファンのことを考えると、何が正解か分からなくなるよ。いずれにせよ、こんなややこしい女子ファンの心理をうまく扱わないといけない、メディアのあっち側の男子たちは大変だなあ、と同情すら覚えるという話でした。
ちなみに、このへんで非道なるストラクチャを確立している J 事務所はやっぱりすごいという結論にも落ちがちだけど、わたしはその非道さに相当な反感を持っているので、そこまでされてもついてゆく女子の多さに、女子心理がますます分からなくなる。男の子たちが魅力的であることと、あの非道さとを連動させて受け入れちゃう女子ファンの柔軟性は、ちょっと怖くもあり、うらやましくもある。