おひとりさまの老後/上野千鶴子

おひとりさまの老後

おひとりさまの老後

ものすごく読むのに時間かかっちゃった…疲れて休んでる間に別の本を読み出して、読み終わって、みたいな感じで、3ヶ月くらいかかったような気がする。それだけ読みにくいというのは多分、わたしにはあんまり合わない本だった、っていうこと。
社会学者の本なんて、みんな決め付けとか自己言及とかが主なのかもしれないんですが、でも「わたしは」「わたしは」で一冊とおしてあって、読んでてものすごーくつかれた。社会学者って、分析対象である「社会」には「自分」も入ってる訳で、自分の位置づけから定義しないといけないのかもしれないけど、それにしても個人的な価値観(学説とかってほどじゃない)(と思った)がみっちりみっちりに展開されていて、読んでて耳元で大声で自慢ばなしされてるような心地が。しんどい。
書いてあることは、老後に関する個人的な提唱…というか、美意識の披露、といったほうが正しいかも。どうせ死ぬときはひとり、結婚なんかしても、連れ合いに先立たれれば独り身で老後を過ごさなければならない、と「おひとりさま」の老後のあり方を滔々と説いてらっしゃる。その論拠がいちいち、家族制度とか戸籍制度とか婚姻制度とか、いわゆる「専業主婦」の仕組みとかに対する噛み付きを孕んでいるので、そこで気持ちがささくれて、本筋があんまりまっすぐ入ってこなかった。ご自身が非婚でらっしゃるのが「結婚できなかった」んじゃなくて「しなかった」んだ、というアピールも随所にあって、そのへんもねえ、なんというか。うん。
何より、文章の途中途中で文字のポイント数も大きくして、太字にしている強調箇所が出てくるのがちょっと、生理的に「えー」という感じで、って、さっきからすごく感覚的な拒否反応ばっかり書いてるんだけど、この本全体そういう感じで、単純に「生理的にすきじゃない」っていうのが先に立って入り込めなかった。書いてあることの実効性とか考える前に、「そうかもしれないけど、そんな風な言われ方じゃああそうですかなんて思えないわー」ってことばっかり考えながら読んでたから、具体的な内容があんまり頭に残ってないというのが悲しいところです。女性の書く、エッセイでもフィクションでもノンフィクションでもないもの(なんてカテゴリ?)にはこういう気持ちになりやすい傾向があるけど、中でもこの本は抵抗感を刺激する度合いが高かった。
そんな訳で、まともな、内容に関する感想が書けない本。今思い出せるのは、「要介護になっても妻に乱暴に当たる夫の決め台詞は『誰の年金で喰ってると思ってるんだ!』、男という病は死ななきゃ治らない」みたいな文章。や、性別を病気扱いってのはどうなんだー、みたいな呆れた感じが。そもそもわたしたちの世代以降は20歳から年金払っているから、「男はサラリーマンで給料天引きで年金払う」「女は専業主婦だから払わない」っていう構図とはかなり実態が乖離してる訳で、そういう土台の価値観がずれてるもんだから、かなり「んー?」と思うところが多かったんでした。
まあ、世代ってことで言えば、上野さんたちの世代で女性で一線張ってる人はご苦労も多く、その分矜持もすごいってことなんだと思うけど、その力み方があまり好みじゃなかったというか…「フェミニストという病も死ななきゃ治らない」とか、ちょっと思ってしまった。はは。「老後に家族はいらない、用途に合わせた友達をメンテナンスしてゆけばいい」とか、そういう論調もぜんぜんすきになれなかったよー、「保険として年下の友達も作るべき」とかね…保険てー。ケチつけ出すとキリがないけど、よくぞここまで、と思いながら呆れて読んでいたので、イラっとなりながらも、逆に楽しんでしまった部分もなくはなかったです、と苦しい感想で締め。ここまで感想書きにくい本も珍しい。