ヨーロッパ企画「あんなに優しかったゴーレム」/あうるすぽっと(2008.08.24 夜)

東池袋がきれいになっていて驚いた! あうるすぽっとは区民ホール的にこじんまりとした、いい感じの施設でした。
とてもヨーロッパ企画らしい公演だったなあと思う。舞台装置における生活空間の作りこみのうまさと、世界観の基本になる異質な要素(今回の場合はゴーレム)をさらりと見せる役割を果たしていて、劇場に入って暗いままの舞台を観た瞬間、「あー、ヨーロッパ企画の芝居を観に来たなー」と思った。
お約束のドタバタ、人の認識の曖昧さの指摘、価値観のひっくり返る瞬間など、もはや堂に入っている感すらあった。うまいんだよなあ、本当に。でも、ヨーロッパ企画のよさは、なんというか、うまいだけでなくて、皆ちょこちょこちしていて愛らしいところだなあと思う。役者が皆、とても善良そうに見えるのです。悪だくみやズルも登場はするけど、決して本質的に邪悪であるということではなく、ただ、市井のやさしくてかわいい人物たちのちょっとした気の迷い、みたいなスタンスが徹底している。ポップで朗らかな世界。客層が圧倒的に若いのも、本人たちが若いから、だけじゃないなあと思った。
ただ、今回松田さんと山脇さんが降板したということで、女性が西村さん1人しか出演していない舞台だったんだけど、あれ、それでも全然支障がないよね…? というのが露呈してしまったと感じた。要は、若い男子がきゃっきゃしている中に、冗談の分かる女子が何人か混じっている、という構図なんですよね、いつも。それが「型」であって、安心感はあれど、意外性とか新機軸とかは見込めない部分があるなあと再確認した。それが悪いということでは全然ないのですけども。
全体的にやさしさのある内容で、くすくす、にやにやと、のびのびした心地で観ていられたのだけど、「ゴーレムはいる!」とクルーの感覚が段々スライドしていくさまはある種のカタルシスを生んで、爽快感が生まれかけて、でもそこでペガサスが出て来て話は混乱、せっかく気持ちよくなりかけたのが台無し…みたいな、その梯子の外し方が、上田さんの意地悪さでもあり、チャーミングさでもあるよなあ、ったくよくやるよなあ、と呆れるような感じで…まああれです、感心した、とそういうことでした。ははは。
ヨーロッパ企画を観ていると、目指しているものが確実に、自分よりもひと世代あとの感覚で志向されているよなあ、と思う。新しい、というとむしろ先鋭的で攻撃的なイメージだけど、どっちかというと、必要以上にフレンドリーで愛嬌に満ちた種類の「新しさ」だから、どうにも変な気持ちになる。そこが好きなんだけど、いつまでそれを継続できるのか? と少々意地悪な目で見ている部分もあって、ヤラしい中年のわたしは、売れ始めた頃から公演を観るようになったヨーロッパ企画が、これだけ売れた今も、作品だけ観ている分には特に大きく方向性を変えたりしていないことに毎回びっくりさせられている。今回は殊にそう感じた。
その頑固さも、なんかちょっと不思議な感じなのですよ。大きなお金が入って、いろんなバランスを崩してしまった演出家の物語を観た翌日に観たので余計に。世代感を著しく意識した週末であったことでした。