Shine a Light

去年、クリスマス前に観たんだけど、感想書きかけて放置しておりました。
なんかいろいろ、たくさん書きかけていたんだけど、その分量を支える熱意が継続できずにただダラダラ書いた結果、ひどく散漫な文章になってしまい、じゃあつまんで書き直すか…とよく読んでみたら、ダラダラの大半がとにかくミック・ジャガーの美しさについてグダグダ書いたものだったという…。

何がどうって、しつこいよーですが、ミックがとにかく美しくってなーっ。ライブのためにニューヨークに向かう機上でボタンダウンのシャツにメガネをかけ、さらさらとペンを走らせてセットリストを考えているときのミックの佇まいはとても静かで、知的な初老の紳士という雰囲気を身にまとっていたのに、いざステージ映像が始まり、一曲目、Jampin' Jack Flash のリフをキースが鳴らして、ステージの後方からぶわっ、と細い体躯が前に踊り出て最初の ♪I was born〜♪ と発声した瞬間、もんのすごい勢いと色気、まぶしい光の粒みたいなのが画面からこぼれるみたいになって、鳥肌がわたしの手足をざーっと駆け上がった。

とか、こんな調子。もう何が書いてあるのか自分でもよくわからない…!

この映画は、ビル・クリントン元米合衆国大統領が主宰するチャリティー団体の募金活動の一環として2006年にニューヨークのビーコンシアターで行われたストーンズのライブを収録したライブ映画だ。メガホンを取ったのはマーティン・スコセッシ監督。映画の冒頭、淀川長治的風貌のスコセッシが考えたホールのステージデザインに対し、ミックが失笑しているところが映し出される。スコセッシはライブで演りそうな曲ごとに厳密にカット割を考えているのに、セットリストは待てども待てどもミックから上がってこない、映画のためのセットのアイデアを送ってもツアー中の彼らからの返事はない…そしてライブの前日になって、セットの模型を前に失笑するメンバーたち。プランニングに NG を出されて呆然となり、ものすごいイライラしている様子のスコセッシがさんざん、さんっざん映し出される。
どーにかこーにかセットも決まり、いよいよ迎えた当日、いろいろ(リハ中なのにクリントン氏との挨拶に時間を割かなきゃいけないとか、氏のみならず彼の呼んだゲスト、ヒラリー女史やらヒラリー母やら…との挨拶、ハグ、写真撮影等々)あって、セットリストが彼の手元に届いたのは開演寸前。届いた紙を慌てて机にばん! と打ち付けて、「一曲目は…!」とスコセッシが叫ぶアップの直後、カットはステージ上に代わり、鳴り響くキースのギターリフ、そしてミックが…というのが先ほど書いた、一曲目、Jampin' Jack Flash だった、という訳です。なんつううんまい引っ張り方、そりゃあ鳥肌立つに決まってるっての!(怒)

まあ、このへんはまだいいとしても。

ビーコンシアターは、例えるなら日本の九段会館みたいな感じというんでしょうか? 狭い床面積だけど高低差が結構ある古いホールで、上のほうの階にいる客に向けてミックが腕を肩から挙げるポーズを何度もするんだけども、その度にタイトなラインのシャツが持ち上がって白い腹がチラッチラする訳です。そのさまのエロいことエロいこと! 細い腰にローライズのパンツがぴったりとはりついて…っていうか、いやあの、あ、あしがみじかいんですよねなんかミックって…でもものすごく腰が細くて全身華奢で。なのに、とにかく常に動きまわっていて、歌いながら一小節を32に分割したくらいのビートを身体全体で刻んで踊っているという。ものすごいエネルギッシュ。でもあんまり暑苦しくなくて…なんだろうな、割と冷静に「パフォーマンス」をしている、という風に観えたのがものすごく面白かったです。
そういう意味で言うと、キース・リチャーズはお腹も若干ぽっこりしていて、衣装もずるんとした身体の線の出ないもので、着替えてもやっぱりずるんとしていて、そのルーズなラインやニヤニヤ笑い、くわえ煙草(短くなったら曲中にブッ! と吐き捨てたりする)…といった、悪たれオヤジ的雰囲気を持っていて、それはそれで違う種類のエロスやエモーションを感じたんですけど、ミックのエロスとは真逆の種類で、そこにつくづくと感心を覚えたりした。この映画だけ観る限り、キースが感情的でミックが理性的、というような役割分担をものすごく感じたんですよね。その分担の仕方が、フロントマンとギタリスト、というバンド上の役割とある意味で逆転して感じられるのも面白いなあと思ったんだけども。
そしてこの2人がまた、ステージ上で目を…合わせないんだよね…! ステージが凸型に客席側にせり出しているんだけど、その先っぽからミックが下がって来たら入れ替わりにキースが前へ出る、という感じでなかなか絡まない。いや、絡むってそういう意味じゃなくてな!(言ってない)

ひどい、どんどんひどくなってきた…!
このあとわたしが書きたかったのは、ステージ上で殆ど眼を交わさない2人が、As Tears Go By でやーっと肩を組んだとき、キースの笑顔がまぶしいようなかわいらしいものだったことにギャーとなったということ。それと、映画(に収録されたライブ)の中でミックが「この曲は他人のために書いた」「自分たちで歌うのは気恥ずかしかったからね」と前置きしてこの曲を演奏していた、その「他人」が誰なのかを帰宅後に夫とネットで調べたところ、当時ミックの恋人だった金髪アイドルのマリアンヌ・フェイスフルにミックが贈ったものだったと知って、更にウヒャーとなった*1ということ。でした。うう、我ながらひどすぎる…。
あと、若い頃の映像で、全員ぴっかぴかにかわいらしく、まるでアイドルみたいだ! と感動したことも多分メモろうとしてたはず。本当にかわいかったんです全員。ちょっとどぎつい感じのコメントしてても笑顔はものすごくキュートで、時代をその手の中に収めてる人特有の輝きと傲慢さがあって、その傲慢さゆえに更に輝きが増していて…という、すさまじい売れっ子オーラ的なものが、モノクロの過去映像からビシビシ発散されていたことに唸らされました。あのカワイコちゃんたちがこの美老年に…そして演奏はこんなにフレッシュで…年輪てすごい、本当に。しみじみそう思った。
演奏については、ストーンズの音源もちゃんと聴き込んでないからあんまり偉そうなことは書けないんですが。ただ、初来日ライブを観に行ったときに感じた「音源と違う」っていう違和感は全然なかったなーと驚いた部分はあった。再結成ライブとかでよくあることだと思うけど、メンバーも編成もオリジナル音源録音時とは変わっている状態でのライブ演奏では、その違いによって曲の持つニュアンスが全然変わって感じられることが往々にしてある。その違和感が、初来日公演を観たとき、高校生のわたしにはすっごく大きく感じられたんだけど、今回映画で観た2006年のライブには全然感じられなかった、という話。
これは年齢によるわたしの受け取り方の違いもあるかもしれないし、東京ドームの割れ割れの音響と映画の(ちゃんとミキシングしてある)音響の違いもあるかもしれないし、豆粒みたいなメンバーをドームのスクリーン越し、画素の粗い映像で観ながら聴く演奏と、メンバー同士のコミュニケーションを丹念に追った映像で聴く演奏とでは、バイアスのかかり方が違ったっていうことなのかもしれない。でも、多分初来日の公演時とそんなに違ってないんだろう人数のサポートメンバーを従えていてもなお、今回この映画で観た2006年のライブはコアメンバーの魅力を前面に出した、紛れもない「ストーンズのライブ」として楽しめるものだったことにちょっとびっくりしたってのが正直なところだった。
なんか、初来日んときの印象で別に今のストーンズってそんなに…と思ってたけど、この映画でその印象、完全に覆されたもんなあ。中でも、チャーリーのリムを存分にかましたスネアの音色のよさには痺れた。次に来日することあったらライブ行きたい気がしたもん。それくらい、観終えたあとに「いいライブ観たなあ!」という感触が残った映画でした。
そのほか、チャーリー・ワッツの口と目の大きさがサライネスの「誰も寝てはならぬ」の登場人物みたいだとか、きっとミックは髪を切ったらオノナツメの「リストランテ・パラディーゾ」シリーズのクラウディオみたいになるんではとニヤニヤしたとか、これ観たはてなの友達が言ってた「若い頃のミックがトリくんに似てる」っていうのを意識しながら(トリくんも一緒に)映画を観たらホントに似ててびっくりした*2とか、くだらないところでいろいろ面白がれてしまい、そんなところも含めて大変満足度の高い映画であったことでした。
この映画、最初は2週間限定上映って聞いてたんだけど、延長してるみたいで、この間テリー伊藤のナレーションで TVCM までやってるのを観て驚きました。ストーンズに思い入れがある人は勿論だけど、ない人でも多分、観終わったらストーンズが、しかも「今の」ストーンズが好きになっちゃう映画だと思うので、詳しくないからきっと楽しめないよなーと敬遠している人も、機会があったら是非ご覧になってみてはどうでしょう。有名な曲*3もいっっっぱい演ってたよ*4。きっと、男子と男子が仲良くやんちゃそうに何かをつくってる…みたいな嗜好のある女性は楽しめると思います。しわは多少…どころじゃなく刻まれてはいたけれども、ステージ上での彼らの顔は、なんというか、ものすごーく「男子」だったので。

*1:ただし、もっとよく調べてみたらストーンズ名義でもレコーディングしてたんですってね、何かのシングルの c/w で。でもそれはオーケストラをバックにミックがひとりで歌う、という、それってストーンズか? というような編成だったのだということも知りました。奥が深い…。

*2:今のミックにはあまりトリ要素は感じなかったんだけど、若い頃の映像が、なんかよくわからないけど、ものすごく似てて笑った。

*3:我が家では映画観たあとしばらく Shattered が流行ってました。妙に耳に残って困る…!

*4:しかし、Ruby Tuesday も聴きたかった。残念。