伊藤潤二の猫日記 よん&むー/伊藤潤二

伊藤潤二の猫日記 よん&むー (ワイドKC)

伊藤潤二の猫日記 よん&むー (ワイドKC)

富江」の伊藤潤二せんせえが猫漫画を描いてたなんて知らなかった! たらふく少女マンガを抱えて並んだレジ前に平積みになっているのを見つけてしまい、一緒にいた夫に「どうしよう、どうしよう!」と騒いでいる間に会計が終わり、漫画コーナーを立ち去ろうとしたところで、「やっぱりあれも買ってくる!」と戻って買ってしまった。わはは。
さる地方都市、ひとりのホラー漫画家が婚約者と共に新築の戸建てに入居するところから話は始まる。婚約者が実家から呼び寄せたのは、一匹の呪い顔の猫、「よん」だった…という感じで、ホラーのフォーマットをフルに活用してはおどろおどろしく膨らませ、最終的には「猫カワイイ!」「猫たまらん!」で落とす、という各エピソードがすばらしかったです。
あと、婚約者(今はもうご結婚されたそうです)のA子さんが、ほうれい線が強くて白目、というどーかと思う描き方をされているのも笑った笑った。白目で猫じゃらしを華麗に振り回すシーンとか、ホラーでよくある「ありえないもの」を描いているかのような仰々しさで最高でした。猫がどっちに懐いているか、夫婦で当てこすったりするのって、猫を飼ってる夫婦はどこでもやるものなんですなあ、読んでてひどくにやけてしまったわ。
もともとわたしは、猫はかわいいと思うけどそれを過剰に語る人たちが苦手…という感じで、猫本とか猫漫画とかに対して心理的な距離を置いているタチだったんだけど、伊藤せんせえのはきっと大丈夫! と買ってみたら、思ったとおりの大当たりだった。猫カワイイ! までが一筋縄ではゆかないところが大変に好ましい。しかも、せんせえはもともと犬派だったのに、作品中での猫の描き方がある時点から変化して、それで担当編集者に「こいつ猫飼い始めたな」と勘付かれ、この漫画の企画を持ち込まれたのだそうな。その担当さんもきっと猫好きだったんだろうな…おそるべし猫好きの嗅覚、とあきれるような気持ちで堪能したことでありました。