町でうわさの天狗の子(1)〜(3)/岩本ナオ

町でうわさの天狗の子 1 (フラワーコミックスアルファ)

町でうわさの天狗の子 1 (フラワーコミックスアルファ)

町でうわさの天狗の子 2 (フラワーコミックスアルファ)

町でうわさの天狗の子 2 (フラワーコミックスアルファ)

町でうわさの天狗の子 3 (フラワーコミックスアルファ)

町でうわさの天狗の子 3 (フラワーコミックスアルファ)

という訳で、岩本ナオがすごく面白いのでは? と勢い込んでまとめて購入。やっぱり面白かったー!
天狗の父と人間の母のハーフ、秋姫が主人公。母と一緒に人間として暮らしている中学生の秋姫は、卒業後は天狗の修行のために山に上がれと言われながらも高校へ進学。なぜなら、高校に通えば大好きな同級生のタケルくんに毎日会えるから。一方、幼馴染の瞬は天狗の修行中なのに、秋姫のお目付け役として一緒に高校に入学することに。望んだ訳でもないのに、天狗の血によって怪力だったり、妖(あやかし)に縁があったりする秋姫の恋は果たしてうまくゆくのか? という話。
まあ言ってみりゃファンタジーなんですが、ファンタジー苦手なわたしでも、ぜんぜんファンタジー感なく楽しめたのですごいと思った。天狗システムがなんだか面白くて、うそ臭さよりも楽しさが勝った感じでした。
まず、主人公の秋姫が朗らかでかわいくていい。女の子っぽいのに湿っぽくなくて、どっかしら楽天的なところがあるのがすごくいいなあと思う。もじもじしてばかりじゃないかわいさというか。意外と行動力がある、とタケルくんも言っていて、その点、友達とかにいたら若干うっとおしそう(ひどい)だけど、一生懸命でかわいらしいです。苦手がってたモミジとも気付いたら仲良くなってるところとか微笑ましい、梅ミント(だっけ?)をもらって食べてるところとか、笑っちゃうくらいかわいかったなあ。
タケルくんも、「雨無村〜」のスミオに比べて全然ちゃんといろいろ考えていて、その分ずるい子なのかと(今まで付き合った子5人のくだりで)思ったけど、そういう訳でもなく、バランス感覚がいい、っていう感じなんでしょうね。単に格好よくてモテモテ、っていうだけでなく、ちゃんとおうちの大工としての血による造形能力があるところ、それを自覚しているところも人間らしくていいなあと思う。他にも、ミドリちゃんも赤沢さんも金田一も西城もいいし、モミジの空気読まない天狗バカな感じも笑える。妖がだるまにムチュウになるところとか、ホント憎めないし、かわいくていいです。嫌な人が全然出てこない。
しかし、何より瞬ちゃんが! ものすごくいい! 秋姫とタケルくんが付き合い始めたあと、2人のテスト勉強を見てあげるためにタケルくんちに駆けつけたときの瞬ちゃんのずぶぬれの足元ったらもう、たまらんかったです! また、そこに気付けるタケルくんはバカじゃないんだなーというのがわかって、それもいいなあと。「2人でいても何もなかったから安心して」「って康徳様に言っておいて」のシーンもよかったねえ、瞬ちゃんが秋姫を…? というのがふわっと香るシーンはどこもすごくよかった、すごく丁寧に描いてあって、ちゃんと読み手をざわっとした感じにさせるシーンになっていて。瞬ちゃんが秋姫のところ(というか康徳様のお山?)に来たいきさつも切なく、わたしはもう断然瞬ちゃんびいきなんだけど、瞬ちゃんが絡むとタケルくんも魅力的になる、という構造が大変に面白い。海で、ミドリちゃんが瞬ちゃんに「姫ちゃんが楽しいときも一緒にいたらいいのに」と言うシーンもすごくよかったなあ、秋姫以外は皆、瞬ちゃんがどれだけ秋姫を大事にしているのかわかってんのにねー、みたいな、そういう瞬ちゃんがとても好きです。でれでれ。
ここで瞬ちゃんを狙う女の子とかが安易に出てこないところが好き…というか、最初はモミジがそうなのかと思ったら、単なる天狗修行ヲタだったりして、敵役みたいなのが出てこないところが愛しい作品だなーと思います。敵役っぽかった人が、性格分かると憎めない存在に変わってゆく感じなんだよね。だから、瞬ちゃんのことを好きな子が出てきてしまったら、それはそれでとても切ない話になるのだろうと思う。今出てる女の子の中にはそのフラグが立っている子はいない(フラグ例;ミドリちゃん→生徒会長/赤沢さん→三郎坊)と思うので、今後が気になるところです。
「絵がうまくない」とはまた思いながら読んだのですが、赤沢さんにお面を貸すときの狐の三郎坊のヒト形になった瞬間とか、ああいうキュン絵みたいなのはきっちり描けているのがすごい。少女漫画のフォーマットはちゃんと踏んでるから、絵そのものでキュンとさせなくても、ちゃんとキュンとなる展開にできるのだと思う。でも、フォーマットだけで終わっている訳でもない。岩本さんの漫画ってこういうところ、すごく自在で、面白いバランスだなあと感心してしまうな。
ともあれ、続きがとても気になります。瞬ちゃん、きっと京都行かないんだろうね…海行ったときみたいに、秋姫に頼られてお山に自分から残っちゃうのでは? わたしとしては、離れて瞬ちゃんの不在を噛み締める秋姫とゆー胸キュンシーンも見てみたいですけども! 岩本さんのブログで単行本作業が近々…みたいなくだりがあったので、楽しみに待ちたいです。