君の天井は僕の床(1)/鴨居まさね

君の天井は僕の床 1 (クイーンズコミックス)

君の天井は僕の床 1 (クイーンズコミックス)

タイトルは主人公? の鳥田まりが「君」で、彼女の職場「オフィス とりだまり」(3階)の天井の上の屋上に、隣のビルの屋上から隙間を跨いでやって来る、職業不明の本田さんが「僕」。この二人の恋の行方と、周りを取り巻く人々の物語。久々の鴨居さんオリジナル作品、やっぱりものすごーーーーく面白かった!
鴨居さんの漫画は本当に、「あるある」ネタっていうと失礼なんだけど、大人として生きているとどーしても出くわす、ちょっとした嫌なこと、面倒なこと、自分がダメだなあと思うこと、やなんかがものすごくものすごく丁寧に、優しく描いてあって、読んでるとめちゃくちゃ励まされてしまう。うんこみたいな脚色でドラマ化されてた「SWEETデリバリー (1) (ヤングユーコミックス)」だって、原作は実にすばらしい作品だったし(デコラちゃんには恋愛貧乏な30代独身の全女性が泣いた!)、「雲の上のキスケさん (1) (ヤングユーコミックス)」なんて、独身で独居で、体力だって落ち始めて、仕事でめちゃめちゃ行き詰ってて…って頃、かなり本気で助けてもらった。作中、眉子が仕事を辞めるときの、マニーの「向いてる仕事をすればいい」って話は今でも忘れてない。いざとなったらそういう考え方もあるんだから、今の仕事でやれるだけやってみよう…って思って結局今でも同じ仕事をしているんだけどねー、そういうこともあるあるー。(しらじら)
今回も、ものすごくたくさん、「うわあ…わかる…!」ってなって変な汗をたくさんたくさんかきました。特に、40代で結婚が決まった編集者の女性が印鑑を作ろうとしたとき、職人の旦那(になる人)の話をしてたら段々変な空気になってきて、「…下の名前で作るって手もありますけど…?」「私も今そう思ってました…」ってなるところとか、うわあ…って…なったな…。
この話だって、独身の頃ならあまりピンと来なかったかもしれないけど、ちょうどこの間、会社の都合でお給料の振込口座を作りなおさなきゃいけなくなったとき、結婚後の今の姓の印鑑を持ってないからどうしよう、ってわたしが言ったら、社長が「印影のオリジナリティだけが重要なんだから、本当は旧姓の印鑑で、新姓名義の口座作ってもいいんだよ?」と言う訳ですよ。で、うーん、でもそれもなんかなあ、この先は新姓で生きてゆく訳だし…夫の印鑑を借りて作るか…でも確かに万が一何かあったらアレだから、少なくとも自分の新姓印鑑は作ったほうがいいのかな…とぐるぐる悩んでたんだけど、そんなわたしを見て社長がぽつりと、「うちなんてさ、結婚したときにちゃんとした印鑑作れるチケットみたいなのをもらって、自分はもう作ってたから嫁にあげたわけ。そしたら、下の名前で印鑑作りやがったんだよね…」と言っていて、えええええ(元コンパニオンの嫁に)そんな挑戦的なことをされてんですか…! と大笑いしていたんだけど、わあ、漫画にも同じような話が書いてあるよ…? とね…やっぱり鴨居さんてすごいなあ、と感動してしまったという次第でした。ええ。
そのほかにも、下の毛に白髪が、とか、老眼鏡で契約の書類が見えない、とか、いい感じになった男性の家に上がったら数日で老夫婦みたいな感じまで駆け抜ける自分が想像つきすぎるから勿体なくて上がれない、とか、本当にねえ、「あるある」なんですよなあ。でもそれを、これ見よがしに「こういうことあるでしょ?」って感じで描いてるんじゃなくて、実感をたっぷり込めて、ユーモアとあったかみを加えて描いてる。そこが鴨井さんのすばらしいところで、信用しているところ。続きが楽しみです!