いばら・ら・ららばい/雁須磨子

いばら・ら・ららばい (KCデラックス) (KCデラックス Kiss)

いばら・ら・ららばい (KCデラックス) (KCデラックス Kiss)

本屋で雁須磨子の新刊を2冊同時に見つけてびっくりして購入。こっちは完結もの。泣けた。
美人でスタイルもいいのに、つっけんどんで不器用で、うまく人付き合いができない茨田さんと、彼女が職場で出会ういろんな人たちの物語。別に各話で主人公が厳密に入れ替わる訳でもないんだけど、なんとなく4人の女の子(茨田さん、茨田さんの職場の事務社員の度上さん、バイトの平良さん、茨田さんの前の職場の石田さん)の話がぐるぐるっと廻って物語が転がってゆく。どの子も、一生懸命生きてるんだけど今ひとつうまくゆかないところもあって…っていう、それぞれがすごくリアルで胸に沁みた。
一番わたしがシンパシーを覚えたのは平良さんだなあ。かわいくもないのに男にこびるための服装、メイクをしている掛け持ちのバイト先の同僚をつい見下してしまうんだけど、そうしてる自分の醜さも分かっててうんざりしたり。バカを見分ける程度の賢さはあるけど、それを隠してうまく生きるほどの賢さはない、っていう、中途半端な不器用さがなんだか、自分を見ているようでチクチクしてしんどかったです。考えたら、この4人の中で平良さんだけいい男の子と出会えてないのね、わあかわいそうに…!
この4人の中では、石田蜜の話が異色な感じだったけど、でも、こういう子が手島さんみたいな男の人を「かわいい」って思うのはなんだか、すごくいい話に思えてずるい! 他の3人はもっとみんな一生懸命考えてがんばっているのに! みたいに思ったりしました。ははは、何の感情移入でしょうか。でもきっと、手島さんみたいな人を「かわいい」って思えるってことはきっと、蜜ちゃんもいい子なんだろう本当は。ずるいなー。
茨田さんと黒岩さんが思いを伝え合うところとか、茨田さんが付き合うなら結婚したいと極端なことを言い出すところとか、黒岩さんがその極端さにきちんと応えようとして行動するところとか、どれもすごくじんわりして、いいなあと思った。なんかね、自分を含めて、実際に結婚した友達の話とか聞いていても、世の中で言うほど自然な流れとかじゃないんですよね。今の世の中、自然にしてたら結婚し損ねることのほうが多い。どっちかが「したい」と強く思う理由があって、それは茨田さんのコンプレックスのように何かの「偏り」かもしれないけど、その偏りを受け入れて、大事にしようと思う人がいたら、結婚するところまで2人でがんばれる、ってことなんだと思うから、この2人の流れはわたしにはすごくリアルに読めたなあ。
雁さんの漫画って、わたしにとってはすごくリアル、なようです。そこが好きなんだと思う。嘘がない、っていう風に読めるのです。そう思っているのはわたしだけなのか? 皆、雁さんの読者はそう思って読んでいるのか? 興味があるので、今度感想巡ってみようっと。