「ゆれる」

ちょっとはっとする感じのエロさを持つ美人監督・西川美和の第二作目。色々気になるポイントがあって観に行って来た。
ざっくり感想へ行く前に、んもーーーーー香川照之香川照之がもう、たまんなかったっ!
(以下感想、畳みます。)
物語とかはまあ、このへんでも見れば載ってますんで。
http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=6621
オダギリジョーのセックスシーンが割とエロくないことにびっくりしたとか、真木よう子の顔をまともに観たのって初めてかもとか、蟹江敬三が最高だったとか、木村祐一ものっぺりした顔でスクリーン映えがなんて凄まじいんだろうとか、思うところは色々あれども。
わたしは何だか、この映画のレビューで皆が判で捺したように「女性らしからぬ脚本」て言ってるのがあんまり分かんなくって、そこがちょっと物足りなかったなあ。自分の思いをモノローグで重ねるところも、スタイルからするとちょっと冗長ではなかったか。割と、語りたがっているように感じたんだけど。脚本がちょっと、口数多かったのかなあ? って。
配役、映像、役者の芝居、どれもすごくよくって、物語だってひりひりするところがいっぱいあった。惜しむらくは言葉まわりだろうか。言葉の選び方、という以前に、「そこで喋らせちゃうのかー」みたいな残念さを何度か感じたかも。一番、生理的に「あーっ」と思ったのはラスト近くに、新井浩文くん演じる岡島が東京まで猛を訪ねてきちゃうシーンだ。彼が背負っているものが見えない。見えないのに、「あの人を俺らに返してください」「奪いっぱなしかよ」なんて芝居がかった台詞を吐く。これは智恵子の母さんもそうで…役者の問題なのかなあ? 分かんないけど、台詞が取って付けてるみたいに聞こえたんだ。ちょっと受け入れ難い感じが残った。
全体的に、兄弟以外の人が薄味すぎるというか、全然性格も生活も、価値観も人生も見えてこなかったんだよね。兄弟の、面会室での対面。あそこだけが描きたくて書いたホンなんじゃないのかという気が。でも実際、兄弟の関係は、役者の芝居のよさも相まって本当ーにエロティックで最高だった。だから、そのほかのところ、あの2人以外要らないなら、そういう描き方にすればよかったんだと思う。皆平等に描くべきだなんてわたしは全然思わないから、もっと大胆に、他のものを切ったほうが潔かったんじゃないのかなあと、そこがすごく惜しく感じてしまった。
あ、でも例外的に、法廷のキム兄はいい役だったと思う。あとは蟹江さんが一人気を吐いてたな。あんな面白味のない役を、よくぞあれだけ、と思う。伊武さんなんてなあ…勿体ないなあ。怒鳴って、公聴から逃げて、知らぬ間にボケて。もっと悲しい感じ、立体的な感じにできたと思う。智恵子だって何か、全然魅力がなかった。勿体ないよね、ひたすら。そのへんのもやもやが若干残った感じだった。
だがしかし、主演2人は素晴らしかったです。あの2人の役もよかった。OJ の泣き顔なんてもう、本当にサイコーだったし、前半のホワイトバージョンの香川照之が…オロオロニコニコワキワキしててえらいこと萌えました、っていうか、この「萌える」という言葉以外の形容が見つからないこの感情の到来はもにょすごく久し振りで、心中わーわー言いながら観てたよ。ははは、アホか。とにかくホント、この2人は最高だったので、この2人の芝居が好きな人には是非に、という感じである。