大人計画フェスティバル感想

で、覚書を踏まえて感想も書いておくよ。
全体通しての感想としては2点あって、1つは大人計画の裏方チームの底力に感激しすぎたという点と、やっぱり松尾・宮藤・阿部の3トップはホントにすごいという点。
前者は、開場時間の小回りの利く調整や入場口の改良、おばけ屋敷の行列はプレ日は階段にとぐろを巻いていたのが、初日には階ごとに並ばせて階段スペースの通行を確保していたり、最終日には屋外で並ぶ人用の日陰を作るテント(運動会のときに立てるみたいなやつ)が設置されていた。灼熱地獄だった最終日には、スタッフさんがあちこちで水を撒いて気温を下げる努力を続けていたし、ボランティアスタッフの教育も行き届いていた。
っていうか、教育って感じじゃなくて、スタッフさんが皆、フェスに携われることを楽しんでる感じで熱心に働いていたのがすごく印象的だったんだよねえ。演劇ボランティアにありがちな気持ち悪さとか偉そうな感じとか仕切り屋っぽい感じとかが全然なくって、話がまどろっこしい人こそいたけど、威張る人とか一人もいなかった。こんな大それたことを、仰々しくないスタイルで実現できる制作チームなんて日本に他にいるだろうか。大人計画の最高に格好いい点ていうのは、ずばり長坂さんの存在だと思った。
後者は、もうねえ、改めて惚れ直しました、3人とも。まあ、3人だけじゃなくて、役者さん全員、ホント献身的に走り回って、ファンサービスに努めて、正直あんなに「もてなし」を頑張れる人たちだと思っていなかったので、いちいち胸を衝かれてどきどきしていたんだけども。その中でもやっぱり、この3人の負荷はハンパなかったと思う。プレスへの露出も大きかった訳だし、期待して来る人の多さはとんでもなかったはずだしね。
松尾ちゃんはフェスの「顔」として手を抜かずに走り回っていて、プレ日の突発サイン会とか本当にびっくりしたし、ママさんコーラスから麿赤児へのダイナミクスとか、頭がおかしくて素晴らしかった。通常の舞台作品とは違って、客と演者の境目が物理的に分かりにくい空間だったと思うんだけど、そこをちょっと楽しみながらもきっちりと「こっち側」っていう線引きの基準を持っていたところが格好よかったなあ。客を喜ばせるようなことを言ったりやったりしても媚びているように見えない、そういう上品さが松尾ちゃんにはあると思った。って、ん、上品はいいすぎか。でもホントに格好よかったのです。腰が引けていながらも水をばら撒くその姿に、ときめきが止まらずにそりゃあもう大変だった。
阿部さんは、考える前に動き出してる感じ。神出鬼没であっちこっち走り回って、着火するのが早いっていうか、瞬発力が凄まじいったら。動き出したら即ち全力疾走、みたいな潔さが実によかった。役者としてじゃなくて、個人として持っている華というか、魅力的なところをヤっつうほど見せられたなあ。本当に、阿部さんが動くと自然に目を奪われるんだよね。ハマケンもブログで「砂鉄」と言っていた*1けど、凄まじい吸引力だった。でも、くっついてってる女の子たちが楽しそうだったのがすごいなあと思ったよ。楽しいことをしようとする感じとか、ブレがなくて堂々としてるところとかで、客をどんどん楽しくさせることができる人なんだなあと思って眺めていた。動いてるときの確信に満ちた格好よさは、大人計画の他の誰とも違っていて、やけにヒーローっぽいというか、戦隊ものだったらやっぱりレッドな人だなあと、つくづく感じ入ってしまった次第。
宮藤さんは、本質的に賢い高校生ってことなんだなあって思った。パッション制御しない感じと、ちゃんと運営のこととか考えて立ち振る舞う理性とが同居してて、ああいう男の子が高校時代に同じクラスにいたら絶対好きになっちゃってたなあと…や、今年で34です。えへーすみません☆ エンディングの「Traveling」で最後まで振り付けをやろうとしないところとか、非常に愛しいというか、生理的にしっくりくる感覚が垣間見えて面白かった。
魂の選曲は相当気持ち悪かったです、石鹸が他にやろうとしてた曲は何だ?! とカヲルさんに怒鳴られて、「ブルーハーツとか…」と言ったり、マイクを手にした暴動が「レモンティくらいしか歌えないけど」とシドゥへのお饅頭らしきことを口走ったりしていたけど、ブルハも2枚目までなら全曲ドラム叩いたことあるし、大学(宮藤さんの2コ後輩)に入学して部活(宮藤さんのいた軽音の隣のバンド系部活)で最初に人前で叩いた曲が「レモンティー」だったし。もうやめてーと思った。色々、開けちゃいけないブラックボックスをこじ開けられた気分であります。はは。
あと、あの人はなんつうか、甘酸っぱいですね。思春期の面倒臭い感じを、割と確信犯的にぶら下げたままうろうろしやがるので、言いようもない気持ちになってどきどきさせられるというか。んー、ずりーなー。
ともあれ、こんなものすごいイベントを敢行してやり遂げた大人計画っていう組織そのものに対して、今は心からの感謝と労いの気持ちでいっぱいであります。大人計画がこの世にあってよかったなあって思うし、大人計画を好きでいてよかったと心底思った。11年前、「ちょん切りたい」に誘ってくれた友達が今妊娠中で、彼女と一緒にこの祭りに参加できたのも嬉しかったし。こうやって、これからも、わたしの人生に大人計画が存在してたらいい。一生引っ張りまわしてくれたらいいなあと思う。
楽しかったのは本当のことながらも、こんな大変なフェス、もう一度やってほしいなんて死んでも思わなくって、わたしはもう、この3日間で充分だと思った。この記憶で50年は保つくらい、楽しい思いをさせてもらったから、もっと他の新しいことに是非チャレンジしてってほしいなあと思った。
…以上、これでわたしの覚えていること一通りです。思い出して書いてるだけでも無茶苦茶楽しかったけど、ここまで書いたから、わたしの大人フェスはもうおしまい。いつまでも「楽しかったなあ」なんてぽわぽわしていても仕方がないので、ここでフェスボケに一区切りつけることにする。終わっちゃって寂しいけど、次の事故に備えて、わたしはわたしの領分で英気を養って頑張ろうっと。
皆さん、ホントにお疲れ様でした。ほんでもって、ありがとう大人計画。愛してます!

*1:http://sakerock.com/room/hamano/log/eid9.html カヲルコス写真も同じエントリ内。