モテキ(1)/久保ミツロウ

モテキ (1) (イブニングKC)

モテキ (1) (イブニングKC)

1巻いよいよ出たねー。ちょうどこの収録分までは雑誌連載をリアルタイムで追っていたので、2巻が待ち遠しい、という身も蓋もない感想が真っ先に来た。失敬。
29歳派遣社員彼女いない歴=年齢の主人公・藤本の許に、ある日いきなり、過去に因縁があった女たちからの電話やメールが一斉に押し寄せる。そう、誰しも一生に一度はあるという「モテ期」の到来だ! 藤本は舞い上がってひとりひとりに会いに行き…という話。
フジロックひとりで行こうとしてたり、カメラ好きの女友達と通ぶって漫画(将太の寿司とか宮本から君へ)の貸し借りしてたり、モテないことで抱えた呪詛をブログに吐き出していたり…と、藤本がいわゆる「非モテ」がシンパシー覚えやすいキャラクターに設定されているのがお見事! という感じ。本当に、ああ、いるいる! って思うポイントが盛りだくさん。笑っちゃうくらい。
んでもって、この藤本のダメさがものすごいんですよ! うわあモテ期が来たよ! と浮かれておきながら、「俺はこのモテ期に誰かを好きになることができるだろうか」とか自問しちゃってんの。要するに、モテる=誰かに好かれる → 好かれたら好きになれる気がする、ということですよねー、あほかっつーの! うんこめ!
自分から真面目に女の子を好きになれるほど他人に興味もないくせに、女友達が「早く次の恋をしたい」と言うと「俺のことはどう思ってんの?」とかショックを受けるし、憧れてる女の子にホテルに連れ込まれそうになっても、「俺のことどう思ってんの?」と抵抗したりするし。自分から誰かを好きになって思いを伝えるような度量もないくせに、女の子からの言葉をほしがってばっかり、しかも何度も同じようなことを繰り返す。ダメすぎて失笑ですよ。うんこうんこー、やーい!
1巻出たことで改めて、これ読んで勝手にシンパシー覚えて身もだえしてる男子がたくさん発生するんだろうけど、藤本みたいな身勝手な男は、よっぽど運や巡り合わせに恵まれないといい関係築ける相手には出会えませんよ。可能性がゼロとは言わないけどすげー低い。賭けてもいい。それをシンパシー男子に学ばせて成長させやってほしいよ、久保せんせえ! きっとそういう読者は「そのままの藤本くんで大丈夫、わたしは大好きだよ」と言ってくれる女子が出てくるのを期待するんだろうけど、そんなこと現実にはほぼ起こらないから! 藤本が成長しない限り女はなびかない、というリアルな展開にしていただきたいもんですよ! 力いっぱい切望するねわたしは!
という訳で、ものすごくよくできた作品であると。ただ、こうやってまとめて読むといいんだけど、連載中は構成が分かりにくいなーとちょっと思ってました。過去に因縁があった女の子たちと再会する「モテ期」を現在とする時制で描きながらも、その子との「過去」の回想ががっつり織り交ぜられていて、時系列がいったりきたりし続けている構成が混乱を招くというか。例えば夏樹と再会したときのくだりでは、前回の最後ですごく引っ張ってた展開(夏に、夏樹に呼び出された店を出て、やけっぱちで夏樹と抱き合う)の続きが、次の回では冒頭からは描かれない。数ヵ月後に飛んで、まったく違うシーン(冬の帰省)から始まり、前回の続きを過去のこととして回想したりする。そのへんがね、凝りすぎ? というか、読んでて「あれ?」ってなることが多かったです。
でもまあ、なんか、1巻のラストの2巻予告みたいなところでは、ヤンキー林田の支援によって女たちに復讐? を開始するらしいので、今後の展開は時系列が混乱することもないのかな。まあ、こんなのは枝葉のいちゃもんで、本質的にはすごーくよくできた作品だと思ってますんで。ええ。
あと、特筆すべきは、出てくる女の子が全員べらぼうにかわいく、かわいさも身勝手さもしみじみリアルだという点ね。女性が描いてる漫画ならではの生々しさ。このペンネームで女性、っていうのを逆手に取った巻末のあとがき漫画も面白かった。この作品読んで「久保せんせえは女性なのにモテない男性の気持ちがよくわかっててすごいな!」と喜ぶ男子が多そうですけど、久保せんせえ以外も、女性はみんな、お前らのふがいなさをよっく分かって日々いらいらしてんだよ、という事実にまで気付いたらいいのに、と思います。自力じゃ気付けないんだろうけどネ!
ああ、どうかこの先、うんこたちを懲らしめる展開となりますように。祈。